乙一さんの映画原作本。監督も乙一さんだそうで。いつの間に映画監督なんか
やるようになったのでしょう・・・というか、久しぶりの乙一名義作品が
映画原作本って^^;その前はファンタジーだったし。なんか、乙一名義作品が
迷走しているような。
本書は、かなり直球のホラー小説。簡単にあらすじを述べると、ある怪談話を
聞いた人が次々と呪われて死んで行くという、いわゆるリング系のホラー。
映画原作のせいか、いつもの乙一さんの文章とちょっと違うなぁって感じが
しました。脚本ぽくしてあるって感じでもないんですけど。だから、これを
作家名隠して読んだら、多分乙一さんが書かれたとは思わないだろうなぁ。
万人受けする文章にしてあるっていうか。乙一色を消してある感じ(例えば、
普段の乙一さんだったら『~だと思う』って表現は、ひらがなで『~だとおもう』
って書いていたと思うんですが、普通に漢字表記で書かれていた)。
ストーリーやキャラ設定等、ごくごく普通のホラー映画のそれって感じで、
いまひとつ目新しさは感じなかったなぁ。せっかく乙一さんが監督されるのだから、
もうちょっと乙一色が強い作品にしても良かったんじゃないだろうか。
呪われた人が死ぬ時に目玉が破裂するって映像は、なかなかにショッキングな
ものがあるとは思いますけれど。ちょっとスプラッター過ぎて、映像だと
引きそうです・・・^^;;この、目玉が破裂して死ぬ理由も、いまいち
はっきりしていないような。
終盤の伏線回収はさすがだな、とは思ったんですけど、それでも腑に落ちない
部分もちょこちょこ残されていて、なんとなくすっきりしなかった。瑞紀と
春男が呪われたにも関わらず、死ななかった理由も有耶無耶なままだし。
今後、常に死と隣合わせで生きていかなきゃいけないってのも精神的に
キツそうだなぁ・・・。呪いを解く方法も結局わからないままですから。
一応、『シライサン』に出会ってしまったら、目を見続ければ死なないらしい
ですけど、その場は難を逃れられたとしても、根本的な解決には全くなっていない
訳ですしねぇ。
石森ミブの孫娘の正体には驚かされました。エピローグ部分に出て来た女の子
の正体にも。でも、それが真実だとしたら、単なるエゴですよね・・・あれだけ
関係のない犠牲者を出して。なんか、胸糞悪いとしか思えなかったな。
でも、本書で一番驚かされたのは、『シライサン』の本当の意味かも。完全に
『白井さん』だと思っていたからなぁ・・・^^;まったく見当外れだった訳で。
映像ではこの部分、どんなイントネーションで語られているのかな。
乙一作品だと思うと、ちょっと肩透かしな印象は否めないかもしれません。
初期の頃の切ない系乙一とか、『GOTH』みたいな黒乙一作品がまた読みたいなぁ。