貴志さんの最新作。4つの作品からなるホラー短編(中編?)集。共通している
のは、タイトルにもあるように印象的な場面で秋雨が出て来るところくらい。
それも、そこまで重要ってほどの要素でもなく。ネット検索していたら、どなた
かの感想に上田秋成の『雨月物語』を意識した作品と紹介されていました。
いかんせん、『雨月物語』を読んだことがないもので、どの辺りがインスパイア
されているのかはさっぱりわかってません。すみません・・・。
ちょっと、オチがすっきりしないと思うものもありましたね。ジャンルはホラーに
入ると思うのですが、そこまでの怖さもなかったような。一番怖さを感じたのは、
ラストの『こっくりさん』かな。これはラストのオチまでしっかりしていたし。
ただ、読む人によって好みの作品は分かれそう。なんだかわからないままに
ぞっとした気分にさせられる『フーグ』が好みという人もいれば、呪われた歌
を歌った無名の天才歌手の秘密を探る『白鳥の歌』が好みという人もいるだろうし。
人の悪意の怖さと醜さを思い知らされる『こっくりさん』が個人的には一番怖かった。
貴志さんは、こういうのを書かせた時が一番怖いと思う。未だに、『黒い家』を
読んだ時の恐怖が忘れられないもの。
冒頭の『餓鬼の田』は、ハイスペックなのに、なぜか女性と付き合ったことがない
男に好意を寄せる女性の話。意中の男性がなぜ女性と付き合ったことがないのか、
その秘密を聞かされた女性が、その話を聞いた上でどういう態度に出るのか、が
読みどころ。この男の業の深さに絶望的な気持ちになりました。
どれも違った読み心地のある作品。貴志さんのホラーが好きな人なら楽しめるのでは
ないかな。近々、似た作品集がもう一冊刊行予定らしい(『梅雨物語』という
タイトルだそう。梅雨時の出来事ばかりが描かれるのかな)。
そちらも楽しみにしていよう。