ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

有栖川有栖「カナダ金貨の謎」(講談社ノベルス)

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国名シリーズ第10弾だそうです。あれ、まだ10作目なんだ!って感じです。

火村シリーズはいっぱい出てるから、もっと出てるかと思ってたけど。

中編短編取り混ぜて5作が収録されています。うち二作はアンソロジー

既読。どちらもまだ記憶に新しかったので、なんとなく内容は覚えていました。

改めて読んでも面白かったからいいのですけどね。

 

では、各作品の感想を。

『船長が死んだ夜』

アンソロジーで読んだ時も同じ感想だった気がするんですけども、亡くなった

元船長の部屋に貼ってあったポスターの使い方がこの作品のキモですよね。

ただ、使い終わった後、燃やさずにまた貼り直しても良かったのでは?とも

思ったんですけど・・・貼り直しの跡が残っちゃうか。アリスが推理した、

元船長の死に際の言葉の聞き間違いに関しては、さすがに無理があるような気が

しましたが、本当のところはどうだったんでしょうね。

 

『エア・キャット』

火村先生がひたすら猫好きであることが判明する可愛らしいお話。時絵さん

登場にほのぼの。准教授とアリスと時絵さんの三人のシーンが大好きです。

火村先生が漱石三四郎に注目した理由にもほのぼの。こういうお話を

もっとたくさん読みたいなぁ。猫と戯れる准教授の姿は絵になるしね!

 

『カナダ金貨の謎』

シリーズ中、珍しく倒叙もの。被害者の首からカナダ金貨のネックレスが

なくなっていた理由に、なるほど、と思わされました。洗面所と洗濯機の指紋

を拭ってあったところから、そこまで推理するとは、さすが火村センセイ。

細やかな論理展開には脱帽でした。

 

『あるトリックの蹉跌』

アリスと火村先生の出会いの一場面を描いた作品。若かりし二人の初々しさに

ニヤニヤ。アリスがデビュー前の投稿時代に書いた小説が二人の出会いの

きっかけでしたっけね。その小説の内容が伺い知れて嬉しかったです。以前の

短編集でも学生時代の火村先生の慧眼ぶりは出て来ましたが、ここでも同様。

アリスが頭をしぼって書いたミステリー小説のトリックが、さらっと読んだ

だけで解明されてしまうという。

小説のトリックはあっさり解明されてしまったけど、ラストのアリス本人に

ついてのドンデン返しで驚く火村先生が面白かった。確かに、誰もこれが

○○だとは思わないよね(苦笑)。

 

『トロッコの行方』

ロッコ問題に関しては、何かで聞いた覚えがありました。確かに、究極の

選択ではありますよねぇ・・・。私も、線路を切り替える方かなぁ・・・。

そのまま何もしなければ5人が命を落とすとしたら。自分の手で太った男を

突き落とすのはやりたくないし。全員を助ける方法を模索してる時間もない

だろうし。難しい・・・。

現実の事件の方は、犯人の動機が身勝手過ぎて腹が立ちました。犯人自体も

意外でしたけど。だって全然関係ないじゃないか。動機がまさかの理由過ぎて。

淡々と行われる事情聴取の中で、犯人の小さな間違いを誘発させて、犯行を

明らかにさせた火村先生の手腕に感服しました。拍手。

意味深に出て来た大阪港のエンブレムが何でもなかったのには、ちょっと拍子抜け

しちゃいましたけど。しかし、港のエンブレムに鵺を使うってのが不思議。

鵺といえば、私も一番先に思い浮かぶのは正史の悪霊島。しっかり本文にも

出て来てちょっと嬉しかったです。