ミステリ読書録

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米澤穂信「巴里マカロンの謎」(創元推理文庫)

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なんと、11年ぶりの小市民シリーズ。え、もう11年も経ってるの!?と

私もびっくり。でも、確かに自分の過去記事見てみたら、『秋期限定栗きんとん

事件』の記事を2009年に書いていました。記事読み返してみても、全然

内容覚えてなかったよ・・・(だって11年ぶりだよ!?)。待たされすぎだよ!

しかし、今回は『冬期限定~事件』の文字がタイトルから消えてしまったんですね。

冬の話なのは間違いないのですけども・・・なんとなく、さみしい。短編集

だからかな?あれ、一作目とか二作目って短編集じゃなかったけ??これからは

『~の謎』って形になるのかな。四部作だとしたら、あと冬期だけだったのになぁ。

それとも、出版社のあらすじ読む限り、これは番外短編集って扱いみたいだから、

もう一冊正編となる『冬期限定~』が出るんでしょうか(そうだといいが)。

まぁ、何にせよ、再び小鳩君と小佐内さんコンビに会えたことが何より嬉しかった

です。二人とも相変わらず過ぎて。前作(『秋期限定~』の自分の記事読み返し

たら、小鳩君と小佐内さんそれぞれに彼女と彼氏が出来たって書いてあって

驚いたのだけれど、今回はそういう恋愛要素は皆無でしたね・・・。小佐内さん

はどこまで行っても甘いスイーツにしか関心がないようで(笑)。まぁ、

時系列で言っても、『秋期~』が高二~高三の出来事だったのに対し、本書は

高校一年のお話のようなので、まだまだ二人とも若かった(?)ということ

でしょうけれど(時系列的には、一作目の『春期~』の後のお話になるようです)。

四作収録されていて、どれも一応単独でも読める形ですが、微妙にリンクした

お話になってもいます(登場人物が重複していたり)。甘いお菓子もたくさん

登場し、幸せな気分にもなれます(笑)。ただ、お話自体は相変わらずのビター・

ブラック風味。この落差がいいんだな。やっぱりこのシリーズ大好き。

では、一作づつ感想を。

『巴里マカロンの謎』

小佐内さんから、放課後、名古屋の新しいパティスリーに新作マカロン

食べに行くのに付き合ってほしいと頼まれた小鳩君。お店に入ってマカロン

セットを頼んだ二人だったが、小佐内さんが席を外し、小鳩君が一瞬目を

話した隙に、なぜか小佐内さんのお皿の上のマカロンが四つに増えていた。

一体、誰がなぜこんなことをしたのか――。

いくらサプライズでも、マカロンの中に○○○○を入れたのをもらっても、

あんまり嬉しいと思わないけどなぁ・・・なんか、衛生的にどうなの?昔

流行ったような気もしますけど。小鳩君と小佐内さんの考察合戦はやっぱり

面白かった。

『紐育チーズケーキの謎』

有名パティシエ・古城春臣の娘・秋桜と知り合いになった小佐内さんは、

彼女から中学校の文化祭に招待された。部活の模擬店でニューヨーク

チーズケーキを出すらしい。一緒に行ってほしいと誘われた小鳩君は

承知してついて行くが――。

ニューヨークって紐育って書くんですね。当て字ですらない・・・。

小佐内さんが隠したCDの在り処にはびっくり。そんな短時間で出来るか、コレ

・・・とちょっと首をかしげてしまったけれど。とっさにこんなことが考え

つくってところが、小佐内さんのすごいというか、怖いところだと思います。

『伯林あげぱんの謎』

ある日、クラスメートに頼まれて、校内アンケートを新聞部の部室に届けに

行った小鳩君。すると、そこではベルリン名物のあげぱんをめぐって

思案している新聞部員四人がいた。四つのあげぱんのうち、辛子入りを

食べたのに嘘をついた部員は誰なのか――。

辛いあげぱんを食べた人物が誰なのかは、ほとんどの人がわかるんじゃ

ないでしょうか。ただ、なぜそういう状況に陥ったのか、そこが全然

わからなかった。小鳩君の推理を読んで、なるほど~~~!と思わされました。

その人物が悪意で食べる訳はないし、出来心だったのかな、とか思いつつ、

それも腑に落ちないし・・・と思っていたので、すとん、と腑に落ちました。

ただただ、気の毒としか^^;普通のやつ食べたかっただろうなぁ。

『花府シュークリームの謎』

小佐内さんに誘われ、冬の寒い日の放課後、甘味処に行くことになった小鳩君。

二人で甘味に舌鼓を打っていると、小佐内さんの携帯に小城秋桜からの電話が

かかって来た。秋桜によると、やっていないことで学校を停学になったらしい。

二人に助けを求める秋桜に事情を聞く為、彼女の自宅に行くことに――。

幸せな人を妬む人間はどこの世界にもいるってことですね。彼女を陥れた犯人

には、呆れ果てました。まさか、こんな立場の人間がこういうことをするとは。

秋桜は、この年で人間の悪意の醜さを知ってしまった。それは良いことなのか

悪いことなのか。ただ、良かったのは、小佐内さんと小鳩君がついていて

くれたことでしょうか。まぁ、小佐内さんが秋桜に感じている妬みの感情には

一生気がづかないでしょうけど。秋桜のことを可愛いと思っている感情も

確かでしょうしね。それに、最後に、秋桜のおかげで、美味しいスイーツに

山程ありつけたのだから、妬みの感情もきれいに消えたかもしれないですね

(苦笑)。厄落としがちゃんと出来て良かったです。

ちなみに花府はフィレンツェのことだそうです。これも知らんかったー。

 

今回も表紙がとっても愛らしい。ちゃんと『冬季限定~』は出るのかなぁ。

出てほしいなぁ。二人の三年の冬の話がまだ書かれていないからね。