ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

村田沙耶香「コンビニ人間」(文藝春秋)

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第155回芥川賞受賞作。今更ですが、読んでみました。賞獲った時は予約が

すごくて全然借りられなかったんですよね。やっと予約がゼロになったので

借りられました。本がボロボロ(笑)。普段新刊本を借りる方が圧倒的に多いので、

これだけたくさんの人に読まれた本を借りるのは久しぶりかもしれないなぁ。

薄い本なので、結構すぐ読めちゃいました。しかし、読んでる間ずっと腹が

立っていたような気がする。だって、コンビニ店員である主人公のことを、周り

の人間みんなが馬鹿にしているんだもの。

主人公の古倉恵子は、38歳の独身女性。20歳から18年、スマイルマート

日色町駅前店でコンビニのアルバイトとして働いています。

確かに彼女は、何らかの障害があると思われるほどには、空気の読めない人間です。

幼い頃は、そのことで度々彼女自身も家族も嫌な目に遭って来た。

でも、彼女は、同じひとつのコンビニで、18年間働き続けている。しかも、陳列

や清掃や、その他もろもろ、コンビニ店員がやらなければならないたくさんの

仕事を、しっかりきっちりこなしている。どうやったら商品が売れるか考え

たり。翌日コンビニの仕事が入っているからと、前日は早めに寝て、体調管理

もばっちり。これが、プロフェッショナルと言わずして、何なんですか。

同じ仕事を18年も真面目に続けるってだけで、十分世間に誇れることだと

思う。38歳でコンビニの仕事しかしてないからって、馬鹿にするやつの方が

変だと思うのですが。やる気もなく、遅刻が多いとか休みが多いとか、そういう

人間だったらまだ言われても仕方がないとも思えるけれども。恵子は至って真面目

に仕事に取り組んでいる。それに、コンビニの仕事を馬鹿にするやつの気が

しれないんですが。だって、めちゃくちゃやること多いじゃないですか?

私はコンビニ店員の仕事ってしたことないけど、利用者から見ただけでも、

とんでもなく仕事が多いってわかりますよ。扱ってる商品は食べ物だけじゃ

ないですし、宅配やら振り込みやらチケット発行やらコピーやら、なんでも

出来る場所がコンビニですから。コンビニがあることで、どれだけの日本人が

助かっていることでしょう。今日び、コンビニを利用したことがない人を

捜す方が難しいと思う。それだけ、日本に浸透している場所なんです。

ホットスナックの仕込みなんかもあるでしょうし、空いた時間に商品の陳列

しなきゃいけないだろうし、次から次へと新商品のスイーツが発売されるし・・・。

コンビニ利用する度に、コンビニの店員さんって大変そうだよなぁと思います。

実は、実姉がちょうど今コンビニでパートしてるんですけど、話を聞くと、

一番大変なのがタバコの銘柄覚えることだって言ってました。自分が吸わない

から、余計に覚えるのが大変らしい。なるほど。

まぁ、とにかく、コンビニ店員に限らず、しっかり社会に貢献して働いている人を

蔑み、馬鹿にする権利なんか、誰にもないってことです。一番ムカついたのは、

途中からバイトでやってきた白羽って野郎。まともに働く事もできないくせに、

コンビニの仕事を『くだらない仕事』と切り捨て、コンビニで働く人のことを

(とりあえず自分は棚に上げて)『底辺』だと吐き捨てる。もう、何なのコイツ!

って思いました。極めつけは、じゃ、何でその『底辺』のバイトをしようと思った

のか聞かれた時に答えた理由。『婚活』。は~~~!?意味不明。バカなの!?

って思いました(激おこです)。

挙句の果てには、目をつけたお気に入りの女性のお客さんにストーカーまがいの

行為。呆れ果てました。ここまで典型的なクズ男はなかなかいないんじゃない?

ってくらいのクズ。しかし、その後の展開に目が点に。恵子ぉぉぉ~~~!!

やめろ、やめてくれ~~~!!!って叫びたくなりました。まぁ、そこで

白羽を自分の部屋に連れて行っちゃうところが、恵子が恵子たる所以なのかも

しれませんが・・・もう、白羽が恵子の部屋に転がり込んでからは、読むのが

ほんとに辛かった。誰かコイツを何とかしてくれって思いました・・・。最後

まで白羽は最低最悪の男でしたね。白羽の義姉も、恵子に対してたいがい失礼な

女だな、と思いましたが、こんな義兄がいたら、そりゃ苦労するよね・・・。

でも、最後の最後、恵子が出した結論には、快哉を叫びたくなりました。それで

こそ、コンビニ人間。彼女はコンビニで働くべきひとです。コンビニに必要な

人材なんです。こういう人がいてくれるから、コンビニは成り立っているんです。

幼い頃から『他の人と違う』ことで悩み、『普通でいること』を心がけて来た

恵子。でも、普通じゃなくたっていい。恵子は、コンビニ人間でいればいい。

それが、彼女のいるべき場所なんだと思います。彼女が生きる場所がまた

見つかってほっとしました。

なかなかに考えさせられる作品でしたね。賞を獲ったのも頷ける作品だと

思いました。