長岡さん新刊。『傍聞き』に出て来た女刑事・羽角啓子とその娘・菜月が活躍する
連作短編集。シリーズとしては三作目(『傍聞き』はノンシリーズの短編集に
収録されていましたが)に当たりますかね。『傍聞き』では小学生だった菜月ちゃん
も、今作では中学生になっています。母親が刑事だからか、まぁしっかりした子に
育って。将来は新聞記者になりたいそうで、その夢に向けて着々と努力しているし。
こういう子は確実に夢を実現させるのだろうなぁ。
それにしても、母親が刑事だから事件を引き寄せる体質なのか、菜月ちゃんの周りで
事件起きすぎ!いくら何でも、中学生の周りでこんなに殺人事件が起きるって
おかしいでしょ。金田一少年かコナン君かっつぅの。っていうツッコミをついつい
したくなってしまった(苦笑)。
まぁ、面白かったからいいのですけどね。些細なことが伏線になっていて、思わぬ
ところに物語が着地して行くところはさすが。長岡さんって、着眼点が面白い
ですよね。ただ、ところどころツッコミ所はありますけどね(苦笑)。
では、各作品の感想を。
『黒い遺品』
絵が下手くそな菜月ちゃんが、得意なアレを使って似顔絵を描くと上手く描けた
というのは興味深かった。ただ、道具を変えても普通は画力自体は変わらない
もののような気もしますけど・・・^^;記憶力がいいのかな。
啓子さんにも春が来たかと思いきや・・・皮肉な結末でした。
『翳った水槽』
自分の家に家庭訪問に来た直後に、担任教師が何者かによって殺されたとしたら、
普通の子供だったらかなりのトラウマになりそうですよね。
このお話に関しては、メダカを飼っている身として、とても興味深く読んだの
だけれど、犯人逮捕のきっかけとなったメダカの性質に関しては、かなり
ツッコミ所満載だった。確かにそういう性質はあると思うけど、あんな短時間で
そうなるとは思えないんですが。しかも、犯人がいた時間ってほんとにわずかの
時間ですよね。これはさすがに現実的ではないなと思いました。
『緋色の残響』
出来心とはいえ、あんな理由で殺人を犯すってのはちょっと信じがたいものが
あるなぁ。ピアノの天才少女を殺した犯人はそのまんまの人物でしたが、犯人
を追い詰める為に菜月がやったことを知って驚かされました。この年にして
この慧眼はすごい。啓子が嫉妬するのも無理ないかな。将来はいい新聞記者に
なるでしょうね。
『暗い聖域』
菜月に、アロエ料理の方法を聞いた男子生徒の真の思惑を知って、ぞっとしました。
中学生でよくこんな酷いことを思いつくな。そもそも、大して料理もしたことが
ない人間が、食材にアロエを選ぶって時点で変だな、とは思いましたけど。鋭い
菜月ちゃんならおかしいなと気づきそうな気もするけどね。啓子のおかげで大事な
命が守られて良かったです。
『無色のサファイア』
菜月が、事件の容疑者の無実を証明するホワイトサファイアを探し当てた方法には
びっくり。しかも二年間も。まぁ、現実的ではないと思うけど、菜月たちの執念
に恐れ入りました。菜月は記者もいいけど、刑事も向いているんじゃないかなぁ。
なんせ、啓子の娘なのだし。現場百遍とか、得意そう。でも、真実を報道する
記者として、今の道を突き進んで行って欲しい気もしますね。どんな職業を
選ぶにせよ、彼女なら結果を残すだろうな。このまま真っ直ぐ育って欲しいですね。