ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

東野圭吾「あなたが誰かを殺した」(講談社)

東野さん新刊・・・というには、大分出てから経っちゃいましたけど^^;東野

作品は、当日予約でも待たされるのに、今回は大分経ってからの予約になって

しまったからなぁ。回って来るまで結構かかりましたね~。

『~殺した』シリーズ(勝手に命名)久しぶりだなぁと思っていたら、加賀シリーズ

でもあり、嬉しい誤算でした。加賀シリーズって、タイトルに一貫性が全く

ないから、読むまで大抵シリーズものって気づかないで読み始めるんだよね^^;

今回は、休暇中の加賀さんが事件に巻き込まれるパターン。一ヶ月も休みが取れる

とは、一体今までどれだけ休んでなかったんだ、とツッコミたくなりましたけど

(苦笑)。それでも、やっぱり事件に遭ってしまって、探偵役を担わされるあたり、

もう宿命としか思えませんが^^;『加賀さんに嘘は通用しない』というのが

痛感出来る作品でしたね。相変わらず、些細な違和感を見逃さない慧眼っぷりは

素晴らしい。

今回は、閑静な別荘地で起きた、戦慄の連続殺人事件の犯人を加賀さんが推理

して行くお話。事件が起きた直後に犯人は捕まっているが、関係者の中に共犯者が

いると見做され、その人物を検証で炙り出して行く、という流れ。

今回加賀さんは刑事というよりは探偵って感じでしたね。最初は傍観者でしか

なかったのに、あれよあれよという間に探偵役に祀り上げられ、その通り探偵役を

全うしてしまうという。相変わらずクレバーな人だなぁ。

登場人物が結構多いので、なかなか整理しきれなかった感じ。ファミリー単位で

事件に遭うから、どの人がどのファミリーだっけ、みたいな状態になってしまった。

こういう作品こそ、映像が向いてるのかもしれないですけどね。それぞれの

キャラ造形が、ちょっと古くさい印象は否めなかったなぁ。時代設定はいつ頃

なんだろう。途中、感染症がどうとかいう描写があるから、それがコロナのこと

だったら現在の話なんだろうけど・・・。加賀さんの役職が警部だから、やっぱり

そんなに昔じゃないとは思うけど。

犯人は、意外といえば、意外だった。けど、個人的に、こういう人物が犯人って

あんまり好きな真相じゃないんですよね~・・・。ただ、動機に関しては、

こういう背景があるなら、殺意が芽生えても不思議はないかな、と思いました。

巷では、もっとどうでもいい理由で人を殺す犯罪者が後を絶たないですからね。

被害者はみんな、殺されても仕方ないかなぁと思える人ばかりだったので、

どの人物にしてもあまり同情は出来なかったですね。

そして、最後の最後にも思わぬ黒いオチが待っていました。加賀さんは、きっと

それもすべてお見通しだったのでしょうね・・・。だって、加賀さんに嘘は

通用しないのですから。

『~殺した』シリーズにしては、きっちり謎が解決されていて、もやもやも

なかったですね(今までのやつは、真相が全然わからないまま終わったり

してましたもんね。真相が袋とじになってる作品とかもありましたしね)。

見取り図なんかも出て来て、ど直球の本格ミステリーよりの加賀シリーズ

でしたね。最近は人間ドラマよりの作品が多かったと思うのですが、個人的

にはこっちよりの方がミステリの醍醐味が味わえて好きですね。

面白かったです。