早坂さん新作。ソフトカバーの単行本だからか、珍しく早々に図書館入荷してくれ
ました。途中まで、割とオーソドックスな孤島のクローズド・サークルものだなと
思って読んでいたのですけども・・・早坂さんがそんな普通のミステリ書く訳
なかったのですよねぇ。終盤の展開は唖然の連続。いやー、騙された。もーう、
きれいに完全に。作者の仕掛けがわかった後で、もう一度前に戻ると、そうか、
そういう意味だったのか・・・!と腑に落ちるシーンがたくさんありました。
ミステリとしては成功だと思うのですけども・・・あまりの救いのなさに読み終えて
どよどよーーーん。タイトルの殺人犯と殺人鬼、誰が殺人犯で、誰が殺人鬼なのかが、
この作品のキモでしょう。私は完全に両者を取り違えていました。剛竜寺を殺した
殺人犯が、主人公網走にとっての『殺人鬼』だと思っていたのですが・・・。ここ
にも、作者が仕掛けた巧妙な騙しの手法が隠されていました。
途中で殺人鬼Xの半生が細切れに出て来ますが、この半生もとことん救いがない。
自分の○○(漢字二字)だけじゃなく、△△(漢字二字)までをも殺してしまう。
その出事が孤島の殺人へと繋がって行くのですが・・・なんじゃい、この動機は。
なんでここだけバカミス風?まぁ、そのトンデモっぷりが早坂さんらしいとも
云えるのですけどもね。それにしても、こんな理由で殺された日には、殺された方も
浮かばれないよ・・・。まぁ、剛竜寺を始め、殺されても仕方がない素行の奴が
多かったけどさ。中には理不尽に殺された子もいる訳だから。
私はてっきり、主人公の網走が、いじめられっ子の五味さんの自殺の原因となった
いじめっ子たちを殺して行く復讐譚だと思って読んでたんですけどね・・・はぁ。
いろいろと、人間不信になりそうですよ。ホントにねぇ、もう。五味さんの名前の
正確な読み方を知った時の網走のショックな様子に、心を痛めたりもしていたの
になぁ・・・っと、これ以上書くとネタバレになりそうなんで、この辺で。まぁ、
ひとつ云えるのは、なんだかんだでやっぱり早坂さんってすごい作家だな、
ということでしょうか。我孫子さん辺りが書きそうな作品って感じもしましたけど。
賛否両論出そうな作品ではありますが、騙されたという意味では白旗上げるしか
ないな。どこを読んでも不快極まりない作品でしたけど、ミステリ好きとしては
楽しめましたからね。