ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

太田忠司「遺品博物館」(東京創元社)

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久々太田さん。依頼人の死後、その人の遺品をひとつだけ収蔵する博物館、遺品

博物館。そこで学芸員を勤める吉田は、依頼人の死後、遺族の元に赴いて遺品の

選定を行う。選定の基準は、生前のその人物の人生に関わる重要な物語を持って

いる物を選ぶこと――死者の遺品を巡る、八つの物語集。

なかなかおもしろかったです。亡くなった個人が生前に依頼していた遺品博物館への

遺贈品を巡って、生前の故人と遺族の悲喜こもごもが描かれます。さらっと読めちゃう

ので、忘れるのも早そうですけど・・・^^;遺品博物館の学芸員の吉田のキャラが

飄々としていていいですね。何考えてるのかさっぱりわかりませんけど。遺品の

選定を行う為に、依頼人の遺族の元にやって来るのだけれど、選定している間は

一切個人的な感情を見せない。あくまでも淡々と遺品を選定して去って行く。ただ、

どの遺品に故人の物語があるのか、それを選ぶ選定眼は非常にクレバーで、さながら

名探偵のよう。吉田さんの慧眼には度々驚かされました。遺品の価値は値段ではなく、

その人の人生における物語が感じられるもの、というのもいいですね。依頼時に、

吉田が本人から詳細な聞き取り調査を行っていて、更に死後、遺族からも生前の故人の

ことを聞くことで、どの遺品を選ぶべきか選定します。どの遺品にもその人の物語が

詰まっていて、確かに選ばれるべきものだな、と思えました。でも、いざ自分が

依頼するとなったら、吉田さんは一体何を選ぶのかなぁと考えると・・・うーん、

全然わからない。私を表す物語が反映されているモノって何だろう・・・。図書館の

利用カードとか?(笑)結婚指輪とかは当たり前だしなぁ。特にこれといった物語も

ないから、きっと吉田さん悩むだろうな(笑)。

オチは切なかったり、皮肉だったりとさまざま。

遺族は必ずしも故人を偲ぶ人ばかりではないけど(遺品目当てに群がるハイエナの

ような奴らもいたし)、吉田さんが選ぶ遺品が、故人と遺族を結ぶものなのは確か

だと思いました。

遺品博物館に遺品が遺贈されることで、その人の思い出(物語)がずっとその場所に

残り続けるのは、ある意味うらやましいことなのかもしれないなぁと思いました。

遺品を見れば、その人の思い出ごと思い出してもらえるってことですもんね。って、

展示されてるところに、その品に纏わる物語の解説とかが書かれているのかどうかは

よくわからないですけど・・・。

遺品博物館自体がどこにあるのかとか、吉田さんのフルネーム、吉田・T・吉夫の

Tが何の略なのかとか、謎は残されたまま。続編が出る可能性はあるのかなぁ。

ラスト一作でTの謎は解けるかと思ったんんだけど・・・結局謎のまま。ラストの

話の仕掛けには途中で気づけたのだけどね。Tの謎まではわからなかった(笑)。

気になるので、いつか続編書いて欲しいな。