ミステリ読書録

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似鳥鶏「生まれつきの花 警視庁花人犯罪対策班」(河出書房新社)

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似鳥さん最新刊。ラノベみたいな表紙にちょっと引きつつ読み始めました(苦笑)。

生まれつきすべての能力が優秀な『花人』という人種がいる世界のお話。花人は

常人には聞こえない『超話(超音波会話)』で会話することが出来、体臭は百合の

香りがする。すべてにおいて優秀な為、社会的成功者になる人が多い。将来の

成功が約束されている為、犯罪に走る人もいない。しかし、そんな中、花人が

容疑者に含まれる殺人事件が起きる。これは本当に花人による日本初の殺人事件

なってしまうのか――警視庁捜査一課の火口と花人の水科巡査は、事件の捜査

を開始するのだが――。

うーむ。かなり特殊な警察ものでした。正直、この作品のキモとなっている『花人』

という設定が好きになれなかった。生まれつきすべてにおいて優秀だから犯罪を

犯さないってのが、まずあまり説得力がない。容姿端麗で頭脳明晰でも犯罪犯すやつ

はいくらでもいると思うんですが。東大生だって京大生だって犯罪犯すやついっぱい

いるじゃないですか。成功者だって、成功したからこそ、お金に関わる犯罪犯したり

するし。犯罪犯す理由がないから花人による犯罪者はいないって言われても。何か

納得いかないよなぁと思いながら読んでました。

花人ならではの能力を使って殺人を犯すという、三つの殺人事件のトリックの部分は

面白かったのだけど。その三件の殺人事件が起きた後の展開に目が点。というか、

『また出た!』ってのが正直な感想。似鳥さんって、ほんと、こういう一つの

出来事からSNSとか使って、スケールの大きな規模の大事件に発展させる展開が

お好きですよね。

ただ、もう、この展開自体がマンネリ化していて、食傷気味。政府も巻き込んで、

花人への差別意識を国民に植え付けられて行くとか、怖すぎるんですけど。ってか、

普通の人間は、こんなヘイトクライムに加担しないし、まともな人間の方が

少数派になっちゃうって、どういう国民性なんですか。お隣の国とかあちらの国

とかならありそうですけどね。民主主義の日本で、こういう展開はさすがに説得力

がないと思います。いじめとか差別とか、嫌いな人のほうが圧倒的多数なはず。

日本人をそんな嫌な国民性にしないで欲しい。

そして、ラストはお決まりの○○行為に発展。この展開は、戦力外捜査官シリーズ

でもうお腹いっぱいなんですけど・・・。

ラストも風呂敷広げた割には尻すぼみな印象。まぁ、この辺りの収拾の付け方も

戦力外捜査官シリーズと似てますね。

草津さんのキャラ変に一番驚かされたかなぁ。捜査しないでゲームばっかして

部下にすべてを丸投げするとか、ほんとイラッとしました。ま、それも全部計算

だったんでしょうけど。

個人的には、いろんな意味でハマらなかった作品でした。無理矢理最後にスケール

大きくしようとするの、もうやめた方がいいと思うんだけどなぁ。と思いながら

巻末の著者作品リストを眺めていたら、戦力外捜査官シリーズも本書も河出書房

新社からの出版。河出書房の担当者がこういう作風が好みなのかしらん。謎。