ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

読了本三冊。

どうもこんばんは。12月にしては温かいですね。明日は何と20度を
超えるかもしれないとか。異常気象・・・。
まぁ、寒がりの私には有り難いですけれど(笑)。

今回読了本は三冊。さっき調べましたら、今現在、今年読んだ冊数は今日
読み終えた1冊を入れて120冊だそうで(読書メーター調べ)。
去年は一年通して128冊だったらしいので(昨年度マイベスト調べ(w))、
あと20日ちょいで8冊は無理だろうなぁ・・・ということで、昨年超えは
達成できそうもないです(T_T)。でも、思ったよりは頑張っていたかなぁ。
100冊行かないかも・・・と思ったりもしてたんで。
来年はもう少し読了数を増やしたいです。プライベートの時間が増える予定
なので、達成できるはず~!


読了本は三冊。

では感想~。


秋川滝美「放課後の厨房男子」(幻冬舎
『居酒屋ぼったくり』シリーズ作者のノンシリーズ作品(今後シリーズ化されるか
は謎ですが)。
タイトル通り、 男子校の料理部男子たちがお料理に情熱をかける青春物語。
ただし、料理部といっても、名称は包丁部。部員数5名の弱小部です。
主人公は、元陸上部の勝山大地。怪我によって陸上部を退部せざる得ず、若干強引な
先輩二人の勧誘によって包丁部へと入部することに。料理は全く未経験だが食べることは
大好きな大地は、なんだかんだで部に慣れ親しんで行く。しかし、二年生に上がった
ばかりの大地は、今年度で先輩二人が卒業してしまうと廃部の危機になってしまう為、
なんとか新入部員を獲得しようと必死になる。紆余曲折の末、なんとか二人の
新入部員の入部にこぎつけたが、うち一人はかなりの問題児で――。
表紙も含め、全体的にマンガチックな設定で、ラノベを読んでいるような気分でしたが、
料理男子という響きだけでも好みの設定なので(笑)、なかなかに楽しめました。
先輩二人、後輩二人の脇役キャラもそれぞれに個性的で良かったですしね。
ただ、ぼったくりシリーズみたいに、実生活のお料理に役立つ情報、みたいなものは
特になかったですが^^;
高校生男子が、不器用ながらも楽しそうにお料理している姿っていいですよねぇ(おばさん目線)。
部長の日向君(というと、某サッカーマンガのストライカーを思い出してしまうけれど(w))
だけは、プロ並みの腕前なんで、不器用ってのは当てはまりませんけど^^; 
最近、お料理出来る男性がもてはやされる風潮にあるから、料理部って人気ありそう
なのに、廃部寸前っていうのがちょっと不思議でしたけど。料理好きの高校男子なんて
いくらでもいそうですけどねー。
私も結婚するまでほとんど料理ってしなかったんですが、いざ必要に迫られてやってみると、
非常に奥が深いし、意外と面白い。もっと若いうちからたくさんやっておけば良かったなぁと
思うものの一つです。美味しく作れると嬉しいし、作ったものを美味しいって食べて
くれる人がいると、やりがいもあるしね。
大地たちが、包丁部の活動を通して、だんだんお料理自体が楽しくなっていくところが
嬉しかったですね。問題児の不知火君ですら、最後は小麦粉の魅力に取りつかれて、
お料理に魅力を感じ始めましたからね(笑)。彼は今後は包丁部のエースになって
行くのかも?(笑)
まぁ、なんてことはない内容ではありますが、読んだ後ほっこりできる青春小説でした。


似鳥鶏「世界が終わる街 戦力外捜査官4」(河出書房新社
シリーズ第四弾。今回もキャラ造形に反してスケールの大きい事件を扱う点では
前作までと同じ。しかも、今回扱っているのはテロ事件です。あのフランスの事件が
あったばかりで、このタイミング。ぞぞーっとしました。あまりにも、有り得そうで。
犯人グループの正体こそ全く違うけれど、根底にあるのが宗教というのは同じですし。
鉄道を使ったテロというのもね。犯人グループが使った手段といい、警察の対応といい、
本当にリアルで緊迫感ありました。
それにしても、今回の設楽さんも、最後には前作の上を行くような満身創痍状態に。作者は、
よっぽど設楽刑事のことを傷だらけにするのがお好きなようで・・・正直、これで
死なないのが不思議ってくらい、災難に遭いまり^^;ドSなんでしょうかね、作者。
海月さんの得体の知れなさにも、より拍車がかかったように思いました。少女のような
見た目に騙されると、とんでもない目に遭いますね。このシリーズの中で、一番怖い
人物って、実は彼女なんじゃないかって思う。事件解決の為には、平気で設楽刑事を
危険に晒すし。今回、被害者は設楽刑事だけではなく、ある人物も彼女によって精神的に
ボロボロにされてしまいますが。まぁ、その人物に関しては、完全に自業自得なんで、
いい気味とさえ思ってしまったけれど。私もすっかり騙されてしまった。
緊迫感あってぐいぐい読まされたことは間違いないのだけど、正直、個人的には
ここまで作品のスケールを大きくしなくてもいいのになぁ、と思うところはあります。
もっと、コミカルよりにして、小さい事件の解決を積み重ねる構成でも十分楽しめると
思うんだけどな。なんか、事件が重すぎて、読むのがちょっとしんどいんですよね。
状況描写も多くなるせいか、改行が少なく、読むのが疲れる時があったりもして。これは、
似鳥さんの他の作品でも云えることではあるのですけど。キャラクターがコミカルな
だけに、事件との乖離が大きいことに違和感があるというか・・・警察ものですし、
社会問題を取り上げたいというのはわかるのだけど・・・。
あれだけ大きな事件の割に、一般の被害者が少なかったのはほっとしましたけどね。
勇気ある運転士さんに拍手したくなりました。彼の安否がとても心配でした。
次回は、戦力外コンビと名無しの対決とかになるんでしょうか。なんか、また
東京中(あるいは日本中?)を巻き込んでえらいことになりそうだ^^;
そのうち、世界規模にまで発展しそうですね、このシリーズ・・・。
一体どこまで行くのか、ちょっと不安です^^;そして一番不安なのは、
設楽刑事の命・・・。もうちょっと日常を平穏に暮らさせてあげて欲しいです・・・(^^;)。
今回も、あとがきは妄想たっぷりで楽しかったです(笑)。


誉田哲也「プラージュ」(幻冬舎
今流行りの、シェアハウスを舞台にした群像ミステリー。新聞広告で紹介されていて、
面白そうだったので借りてみました。
うん、率直に言って、面白かった。シェアハウスを舞台にした、といっても、テラスハウス
(一度もきちんと観たことないんで、あんま内容わかんないけど)みたいな住人同士の
恋愛のような、軽いものとは全く違います。
舞台となるとは、シェアハウス兼カフェ『プラージュ』。そこに入居することになった
吉村貴生が一応全体通した主人公。貴生は、覚せい剤使用の罪で執行猶予中の前科者。
住んでいるアパートが火事になり、住む場所がなくなって保護司のつてで辿り着いたのが、
女性オーナーが営むシェアハウス『プラージュ』。住居の一階のカフェは、ランチからディナー
まで終夜営業しており、夜は住民や客たちによって飲めや歌えの大騒ぎになる。
貴生は、ここに住みながら日夜就職活動に勤しむが、前科のせいで惨敗続き。
そんな中、貴生は、プラージュの住民たちが、それぞれに人には言えない秘密を抱えて
いることを知る。そして、次第にこの場所が彼にとって大事な場所に変わって行く・・・。

テーマは、犯罪を犯した前科者が、どうしたら再生出来るのか、というところ。
同じ犯罪でも、殺意を持って殺したのと、弾みで殺してしまったのと、過剰防衛によって
殺したしまったのと、いろんなパターンがあるのに、世間の目に映るのは、一律で
『犯罪者』であるという事実。どんな罪にせよ、前科者というだけで、住むところも
就職も容易に出来ない状況になってしまう。彼らに再生の道は残されていないのか。
非常に難しく重いテーマに挑んだな、という感じです。犯罪は悪いことだし、貴生の
覚せい剤なんかは、誘われて魔が差したとはいえ、自業自得な部分も大きい。
でも、たった一度の過ちだけで、すべてを色眼鏡で見られてしまうというのは、
悲しいことだと思いました。ただ、私自身が前科者に対して寛大な態度を取れるか
というと、また違うように思う。やっぱり、それだけで色眼鏡で見てしまうことは
あると思う。きれい事を言っても、やっぱり、自分が雇う立場だったら前科が
ある人間をわざわざ採用しないだろうし、マンションやアパートのオーナーだったら
部屋を貸すことはないと思う。その人物がどんな人間かわからなくても、一度罪を犯した
人間は、また同じことを繰り返すかもしれないし、本質的におかしい人間だと決めつけて
しまうだろうと思う。でも、そういう色眼鏡を外してみたら、本気でやり直したいと
思う人間もたくさんいるのだとわかるのかもしれない。この作品は、そういう自分の
痛いところを真正面から突いてくる内容でした。
記者Aの正体は意外でしたし、その事件の真相にも驚かされました。まさか、そういう
からくりがあったとは。前科者たちの再生がテーマではあるけれど、ミステリとしても
きちんと考えられた構成になっているところに感心させられました。
美羽のサイコパスなキャラクターは、いかにも誉田さんらしい人物像だと思いましたね。
でも、プラージュの住民たちのおかげで、彼女にも最後に人間らしさが出て来たところは
ほっとしました。かといって、彼女のキャラを理解出来たとは思いませんが・・・。
衝撃的な事実がわかった後、三年後の彼らの姿にいくつもの希望があったことが
救いでした。罪を犯した人間でも、その後の生き方次第でいくらでも再生出来るのだと
思えて、読後は爽やかでした。