ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

西澤保彦「夢魔の牢獄」(講談社)

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西澤さん最新作。主人公田附悠成は、夢の中で、過去の他人に憑依できる特殊能力を

持つ。自分の意志で誰に憑依するかは選べないものの、その力を使って、22年前に

起きた未解決の殺人事件の謎を解き明かして行く――という、ちょっと変わった

SFミステリ。ミステリ的には、西澤さんらしく伏線の妙が冴えていて、なかなか

よく出来ていると思います。非常に絡み合った複雑な人間関係にはかなり頭が混乱

しましたが。最終的に明らかにされる、殺人事件の犯人も思わぬ伏兵が出て来た、

という感じで、意外性ありましたし(少なくとも、私は全く予想していなかった

^^;)。夢を見る度に過去の誰かに憑依して、その時起きていた出来事が少し

づつ小出しに明らかにされていく構成もお見事ですし。

ただまぁ、作者は西澤さんですよ。当然、お約束のごとにくマイノリティの性癖

を持つ人がわんさか出て来るワケですよ。そりゃもう、これでもかってくらい、

次から次へと。っていうか、出て来る登場人物、ほとんどがアブノーマルな性癖

持ってるって言っても過言じゃないくらいです。普通だったのって、主人公くらい

じゃないかしら??普通・・・だったと、思うけど・・・(それすら自信なくなって

きた)。

こんな狭い人間関係の中に、よくもまぁ、これだけアブノーマルな人たちが集まった

な、とその偶然に怖気が走りました。似た者同士は集うものだと言いたいのか。

今回は女性同士に限らず、男性同士も近親相姦もアリ。正直、やたらに頻出する

エロ描写を差し引けば、もっとすっきりしたお話になったんじゃないのかな・・・

と言いたくなりました。まぁ、そこは西澤さんだしね。これがなくなったら、

西澤ワールドじゃなくなっちゃうとは思うけどさぁ。もう、途中で何でもアリに

なってきて、辟易してしまった。ミステリーとしては出来がいいだけに、どうしても

いつもエロが邪魔してる気がしてしょうがない。でもご本人はそこが書きたいん

だろうなぁ。今考えると、タックシリーズとか神麻嗣子シリーズの方が異常に

思えてくる。あれは若かったからなのかな。タックの方は、ビアン描写はありました

けど、エロ描写自体はほとんどなかったもんね。ああ、あの頃の西澤作品が懐かし

い・・・。タックシリーズの続きが読みたいなぁ(涙)。あ、でも、今新作が

出たら、やっぱりエロ描写がいっぱい出て来ちゃうんだろうか(汗)。タックと

タカチのそういうシーンは出て来ないだろうけどもさ(出さないでー)。