ミステリ読書録

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松尾由美「ニャン氏の憂鬱」(創元推理文庫)

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シリーズ第三弾。ゆきあやさんの記事で出ているのを知って、慌てて予約。一作

ごとに主役が代わる体裁は、今回も健在。ニャン氏に気に入られた主人公が、

ニャン氏から最後に転職を勧められる流れも。毎度思うけど、ニャン氏と一緒に

働くのは結構楽しそうだし、雇用条件もかなり良さそうなのに、なんでみんな

お断りしちゃうのか理解不能。私だったら、速攻『はい!』って飛びついちゃい

そう(笑)。

ま、それだけみなさん、今の自分の仕事に愛着があるってことなんでしょうけども。

製缶会社に勤めながらバンド活動をしている茶谷は、ある日大株主で実業家の

アロイシャス・ニャン氏の代理という秘書の丸山から、猫缶を開ける時の『音楽的な

響き』について話を伺いたいと訪問を受ける。丸山はなぜか一匹の猫を連れていた。

しばらく雑談を続けていると、ふと茶谷が過去に体験した、逃げた鳥に纏わる不思議な

体験の話を思い出した。なぜかその話に飛びついて来た丸山に詳しく話して欲しいと

請われ、茶谷は当時の出来事を語って聞かせるのだが――。

相変わらず、ニャン氏と秘書の丸山のコンビが良いですね。丸山氏が、ニャン氏の

言葉の通訳中に、たまに氏の口調が移って語尾が『~にゃん』になるところが

なんとも愛らしくて、ほんわかしてしまう。普段が真面目で堅物に見えるだけに、

余計に和む(笑)。

茶谷君を気に入って、彼の行く先々で出没しつつ、なぜか事件に遭遇し、謎を

解いてしまうニャン氏と丸山氏。愛らしい猫探偵にその都度、ほのぼのさせられ

ました。

二話目の銭湯屋の息子のひいお祖父さんが残した暗号を解読するくだりには、

ワクワクしました。隠された宝の顛末は皮肉なものでしたが。ラストで茶谷くんが

作ったニャン氏と丸山氏の為の曲、ちゃんと聴いてみたいです。楽譜がついている

から、譜読みができる人ならどんな曲かわかると思うんだけど・・・って、私も

ピアノ経験者だけど、もう全然楽譜とか読めないし、ピアノも手元にないから

全然ピンと来なかった(言い訳w)。

茶谷くんの音楽活動は今後どうなって行くのかなぁ。バンドは残念なことになって

しまったけど、また新たな仲間を見つけて再スタートして欲しいです。もちろん、

製缶会社に勤めながらね。

それにしても、気に入った人物に出会う度に転職を勧めても、ことごとく断られて

しまうニャン氏がちょっと可哀想。今後、彼らと一緒に働く人物は出て来るので

しょうか。優秀なお仲間が見つかると良いのですけれどね。