ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

東川篤哉「居酒屋「一服亭」の四季」(講談社)

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『純喫茶「一服堂」の四季』の姉妹編という感じ。最初タイトル見た時、ものすごい

既視感があって、あれ?と思ったのだけれど、探偵役の名前見て思い出しました。

でも、あの作品のラストって・・・と思っていたら、『二代目』安楽ヨリ子さん

となっていました。なるほど・・・。それに、あちらは純喫茶「一服堂」でしたが、

こちらは居酒屋「一服亭」。いろいろ、微妙に変化が。最後まで気になったのは、

一代目との関係ですが、結局明かされることはありませんでした。なんか、キャラ

的にはほとんど変わってないようにも思うのですけれど・・・別人なのは間違い

ないんでしょうけどね。極端な人見知り体質は二代目の方が更に深刻なような。

居酒屋の女将なのに、料理の味が微妙って設定が面白かった。普通は、出て来る

お料理がとても美味しそうで・・・って感想になると思うんだけど、そういうのは

一切なかった(笑)。

今回もタイトルでわかるように、一年間に起きた四つの事件が描かれています。

しかも、出て来る事件はすべて猟奇殺人もの。なんともすごい設定だなぁと

思わされますが。東川ワールド全開のゆるい空気なのに、扱っている事件は

猟奇殺人。このギャップがなかなかすごかった。

トリックも実現可能かどうかはともかく、しっかり本格ミステリテイストと

なっていて、なかなか読み応えありました。んな、バカな!とツッコミたくなる

ものばかりではありましたけどね~^^;

一作目の『綺麗な脚の女』は、胴体だけが見つかった、美女のバラバラ殺人事件。

胴体だけが残されていたのはなぜかという謎の真相には、うへぇ、と思いました。

その作業をしている姿を想像すると・・・うぅ、気持ち悪っ。

二作目の『首を切られた男たち』は、首を切断された社長の死体が見つかった事件。

これはちょっと苦しい真相だったな。特に、キヨカワさんと呼ばれた人間の真相の

部分は。

三作目の『鯨岩の片脚死体』は、キャンプ場で、海辺に面した巨大な鯨の形の岩

の上で、片脚だけが切断された死体が見つかった事件。

片脚だけが切断された理由には驚かされました。そ、そんな目的で・・・!?

猟奇殺人とは言い難いものの、死体が切断された理由は、四作の中で一番面白

かった。遺体の切断理由で面白かったっていうのも語弊がある気もするけど^^;

四作目の『座っていたのは誰?』は、雪で閉ざされた山荘で、十のパーツに

切断されたバラバラ死体が発見される事件。

これも、なかなかにトンデモトリック。凍った○○に生首が乗っかるものなのか?

とか、いろいろ疑問は覚えるものの、意表をつかれるトリックは読んでいて面白

かったです。

あと、ちょっとした叙述トリックも入っているし、ラストを飾るにふさわしい一篇

ではないでしょうか。前作のラストのような展開はないので、こちらは同じ設定で

続編書くこともできそうですが・・・どうでしょうね。

それにしても、ヨリ子さんの、相談者をミスリードさせる為に料理を作り、まんまと

それに乗っかって恥をかく彼らを見て悦に入るという性格の悪さにはゲンナリ

しました。あんなに人見知りなのに・・・お酒が入ると性格が悪くなるタイプ

なんでしょうね^^;素面の状態だと、知らない人とは一切コミュニケーションが

取れない極度の人見知りで、飲めば一転、人に暴言を吐き、嘲弄するタイプという、

どちらにしても厄介な性格なのは間違いない。まぁ、なかなか他にはないタイプの

名探偵ですね^^;