ミステリ読書録

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歌野晶午「誘拐リフレイン 舞田ひとみの推理ノート」(角川文庫)

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久しぶりにひとみちゃんの新作だ!と喜び勇んで借りたのだけど、読み始めて

なんとなく嫌な予感がして、奥付みたら、昔に読んだ『コモリと子守』の文庫

バージョンであることが判明。タイトル変えすぎだよ!^^;普段だったらこの

時点で読むのを辞めるのですが、今回は内容忘れちゃってることだし、ひとみ

ちゃんの活躍も久しぶりに読みたいしで、そのまま再読しちゃいました。加筆も

されているということですしね。

とはいえ、文庫でも600ページ越えの大作なので、結構時間かかりましたけども。

中盤は少し、中だるみ感ありましたね(これは以前の記事でも同じ感想だった)。

もうちょっとコンパクトでも良かったかなぁ。

記事を上げるかは迷ったのですが、前回読んだ時の記事は、何作かの感想をまとめて

アップしたものだったので、ここできちんと一作の感想を残しておこうと思いました。

ひとみちゃんは17歳の高校生になっています。一作目が11歳、二作目が14歳

だったかな?三年ごとに成長を追っている形なんですね。だったら20歳のお話も

早く書いて欲しいよなぁ。留学が実現してたら海外が舞台だっていいんだしさ。

語り手はひとみちゃんではなく、彼女の腐れ縁の友人で、引きこもりのだらけた生活

をしている馬場由宇。彼は前の作品でも出て来たキャラだと思うのですが、全然

覚えてなかったです^^;ただ、名前だけはなんとなく記憶に残ってたのですけど。

前のお話で家庭内が崩壊してしまい、両親は離婚、兄は家を出て行き、由宇は現在

母親と二人暮らし。その母親とも会話はほとんどなく、引きこもりの由宇のことを

母親は完全に見放している状態。おこづかいなんてもってのほかだし、携帯すら

解約させられて、使えない。由宇は完全に世間から遮断された生活を送っていた。

由宇は、ここ最近、自分の家の真裏のアパートの一室に虐待されている子ども

がいるのではないかと疑っていた。その部屋のベランダに、何度もオレンジ色の

髪をした女の子が、一人で放り出されているのを見かけていたからだ。そんなある日、

由宇は炎天下のパチンコ屋の駐車場の車の中で、その女の子が一人で閉じ込められて

いるところを見つける。思わず車から連れ出し自宅に連れ帰ったものの、その後

どうすればよいのかパニックになり、友人の舞田ひとみに助けを求める。

しかし、由宇がひとみを連れて自宅に戻ると、当の女の子がいなくなっていた。

何者かに誘拐されてしまったようなのだが――。

タイトル通り、誘拐事件が何件も起こります。まぁ、最初の由宇のポニョ連れ去り

は誘拐ではないけれど。一人の小さな女の子を巡って、ここまで誘拐事件が重なる

っていうのもちょっと偶然が過ぎる感じはありますが、一番大きな、大久保夫妻と

六浦夫妻の同時誘拐事件のからくりは、とてもよく出来ていると思いました。

動機があまりにもゲス過ぎて暗澹たる気持ちになりましたが・・・。確かに、

いろいろと違和感はあったんですよね。大久保夫妻の態度とか。絶対反省するタイプ

じゃないのに、殊勝な態度取ってるのとか。ひとみちゃんの活躍で、あんな酷い

誘拐事件の真相が暴かれて良かったですよ。まぁ、引っかかる部分はいくつか

ありますけどね。

それにしても、主人公である由宇があんまりにもぐだぐだした性格なので、終始

イライラさせられました。引きこもりのコミュ障だから、物怖じしちゃう性格

なのはわかるけど、何でもかんでも全部ひとみちゃんに任せて、自分では何も

しないんだもの。自分がなんとかしなきゃいけない家族の問題でさえ、ひとみちゃん

に丸投げだし。ほんと、ムカつく主人公だなぁと呆れました。ポニョのことも、

そもそも由宇が最初の段階でもっと勇気を出していたら、あんなことにはならな

かったでしょうにね・・・。一番悪いのはもちろん、両親だけどね。だいたい、

子供に真珠(ぱーる)なんて名前つけてる時点で推して知るべしですけど。

2歳の子供の髪をオレンジに染めること自体狂ってるとしか思えないし。子供は

あんたらのアクセサリーじゃないんだよ!って言ってやりたくなりました。虐待や

ネグレクトする親たちの言動は本当にいつでも理解不能。怒りしか湧いてこないです。

ここ数日報道されているママ友による虐待+餓死事件も、ニュース見てるだけで

吐き気がしてきます。自分はあんなに肥えているのに。子供が水だけで10日間って!

うちに来てくれたら、いくらでもご飯食べさせてあげるよ!って言いたくなりました。

子供が辛い目に遭う事件は本当に悲しくてやりきれない。

世の中から根絶して欲しいです・・・。

 

ひとみちゃんは相変わらずカッコよかったです。大久保夫妻に関しても毅然とした

態度でスカッとしましたし。それに、なんだかんだ言って、お人好しですよね。

由宇の頼みを断らないし、エピローグでは由宇のために、あんな危ない橋まで

渡るんだから。由宇は一生ひとみちゃんに頭が上がらないでしょうね・・・。

でも、ラストで、ひとみちゃんがなぜ由宇にそこまでしてくれるかの理由も明らかに

なりました。ひとみちゃんにとっても、由宇の存在は意外と役に立っていたのですね。

ところで、ひとみちゃんの母親の設定のことはすっかり忘れてました。そういえば、

結構複雑な家庭環境だったんだっけね。高校卒業後はどうするんだろうなぁ。

先にも触れたけども、ぜひとも20歳、23歳のひとみちゃんの物語を書いて頂き

たいなぁ。彼女の恋愛事情なんかも出来れば。一体どんな男なら恋に堕ちるのか。

全く想像出来ないぞ・・・。

いつか、大人になった彼女の活躍が読める日が来るといいな。