ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

濱岡実「ひまわり探偵局でお茶をⅡ 夏の足音」(文芸社)

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先日に続けて新刊第二弾。こちらは二作が収録されています。後半の方は語り手が

中学二年の小高真鳥ちゃん。初期作品に出て来たキャラクターですが、なんとなく

名前を覚えている程度でした・・・^^;一作目冒頭から登場してますけどね。

一作目は通常スタイルで陽向探偵の助手・菊野さんが語り手。今回の依頼人は、

亡くなった伯父が残した暗号メモを解読して、ある人物を探し出して欲しいという

もの。伯父は、その暗号を解読すれば、ある男にたどり着く筈だと言い残していた

という。数学好きだった依頼人の伯父の残した不可解なメッセージの意味とは――。

暗号解読のプロセスはとても面白かったですが・・・いかんせん、難解過ぎてもう。

もともと理数系が大の苦手な人間なんで、陽向氏の解説を読んでも何が何やら

さっぱり。陽向探偵の頭の中は一体どうなっているのだろう、と驚くばかりでした。

一体どれだけのジャンルの知識があるのやら。数学にまであれほど造詣が深いとは。

数学にもいろんな用語があるんですねぇ。この暗号、きっとガリレオ湯川先生なら

簡単に解けてしまうのだろうなぁ。菊野さんが苦労して作った図形資料はなかなかの

力作。しかし、数学の知識のない人間がこの暗号読んでも、一生たどり着けないで

しょうね・・・。まぁ、伯父さんはもともとは誰かに解いてほしくてこの暗号を

作った訳ではなかったのでしょうけど。自分の死期を悟って、いたずら心で姪に

自分が作った暗号を見せたかったんでしょうね。姪に、この誰も解けそうにない暗号

を渡すことで、自分の過去の想いにけりをつけたかったのかも。亡くなった後では

その本心はわからないままですけれど。まさか実際解いてしまう人がいるとは

思ってなかったのだろうなぁ。伯父さんと陽向探偵を引き合わせてあげたかったな。

きっといろいろ話が合ったんじゃないかなぁ。陽向氏や菊野さんがやたらに

美味しそうにチェリーパイを食べるものだから、私も食べたくなっちゃいました。

ただ、ローズヒップティーは個人的にはあの酸味が苦手。紅茶はストレートか

ミルクティが好きで、レモンティーも苦手なんですよね。基本レモンは何に入れても

美味しいと思うし大好きなのだけれど、紅茶にレモンだけは許せないんですよねぇ。

人間の味覚って面白いですよねー(え、私が変なだけ?^^;)。

この間読んだ第一弾より遥かにミステリー度は高かったと思いますね。

二作目は先に述べたように、真鳥ちゃんと彼女の友達二人がメインキャラとして

出て来ます。ひまわり探偵局の二人は完全に端役扱い。女の子だけの乙女坂探偵団

の活躍が描かれます。これはこれで楽しい一作でした。ただ、トリちゃん(真鳥

ちゃんのあだ名)の友達の二人、リンちゃんとヤトちゃん、どちらもかなり癖の

ある性格。個性的で良いのだけれど、リンちゃんは中学二年には見えない達観

ぶりで若干引いてしまったし、ヤトちゃんは毎回ヘンテコな語尾をつける話し方が

ちょっと鼻についてイラッとさせられました。どちらも基本的にはとても良い子

なんですけどね。

彼女たちが通う学校の天文科学部で長年謎だと思われて来た、『月の虹』紛失に

纏わる謎を三人が解明するというお話。『月の虹』とは一体何なのか。なぜある日

忽然と部室から失くなってしまったのか――。彼女たちの活躍によって、長年語り

継がれて来た謎が解き明かされて行くのは痛快でした。その謎の背後には、切ない

友情物語が隠されていました。もう少し早く解明されていたら、いろいろと

違っていたのかなぁと思わなくもないけれど。

雨の匂いに名前がついているとは知らなかったです。ペトリコール・・・全然

イメージと違う名前^^;終盤の灯篭流しのシーンは美しく、感動的でした。

曰く付きの『月の虹』の使いみちとしては、最適だったんじゃないでしょうか。

今回の出来事を通して、三人の友情もまた深まったのではないでしょうか。

ひまわり探偵局の探偵活動とはまた違った、爽やかで瑞々しい青春ストーリー

でした。