ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

神永学「心霊探偵八雲 INITIAL FILE 幽霊の定理」(講談社)

心霊探偵八雲シリーズと確率捜査官御子柴岳人シリーズがコラボしたINITIAL FILE

シリーズ第二弾。前作で、八雲と御子柴は反発し合いながらもなかなか良いコンビ

だと思っていたので、続編が出て嬉しいです。

今回もまだ春香ちゃんと出会う前の八雲ですね。エピローグで八雲1巻の春香ちゃん

の事件のことに触れられているので、本編直後に八雲1巻の事件が起きるという

時系列のようです。ただ、本編でもちらっと春香ちゃんらしき女性が登場してます

けどね。

幽霊の存在を数学で証明したい御子柴が、自身のもとに持ち込まれる心霊事件を

八雲に無理やり解決させようとするという流れは前作と変わらず。面倒な性格の

御子柴とは距離を置きたい八雲ですが、相手の方が一枚も二枚も上手なので、

結局協力せずにはいられなくなってしまうという。ただ、一緒に心霊事件に関わる

うちに、八雲も少しづつ御子柴の数学的な考え方に影響を受け始めていく。

御子柴って、言動は破天荒だけど、めちゃくちゃ頭がいいので、論理的思考能力は

八雲より上ですよね。事件の真相も、八雲より遥かに先に推理出来てそうだし。

とはいえ、自分ではあまり動きたくないので、八雲に押し付けるという(苦笑)。

御子柴の言動読んでると、ちょっと京極さんの京極堂シリーズの榎さんを思い出す

のですよね~。なんか八雲をいじめる御子柴が、関君を罵倒している榎さんと

重なってしまって。そのうち莫迦オロカ!って言い出すんじゃないか、みたいな

(笑)。

まぁ、これだけ八雲にしつこくつきまとうのは、なんだかんだで、八雲のことを

認めている証拠なのでしょうけどね。

今回も、幽霊が発端ではあるものの、事件の真相は結局人が起こしていた、という

ものがほとんど。幽霊事件がきちんと論理的に解明される辺り、本編よりも

やっぱりミステリ度はこちらのシリーズの方が高いですね。それにしても、神永

さんの作品に出て来る女性って、総じてクセの強い人が多いですね。性格悪いとか

ひねくれてるとか。春香ちゃんは例外ですけど。一番スゴイのは八雲シリーズの

七瀬美雪ですけどね。今回も、事件に関わる女性は性格悪くて魔性の子タイプが

多かったなぁ。何か女性に対して嫌な思い出でもあるんでしょうか(笑)。

前作の記事書いた時に、八雲シリーズに御子柴が登場しないのが不思議だという

ようなことを書いた覚えがあるのですが、その理由がエピローグで明らかになり

ました。多分この後で御子柴シリーズの方に繋がって行くってことなんでしょうね。

ってことは、二人がクロスする事件は本書で終わりってことになっちゃうのかな。

それは寂しいなぁ。次は、八雲シリーズ終了後の八雲と再会、みたいな形で書いて

ほしい。御子柴も大学に籍は置いてあるみたいですしね。この二人の化学反応は

なかなか面白いので、まだまだ書いてほしいです。八雲も、御子柴の考え方に

ちょいちょい感化されてる感じありますしね。春香ちゃんと付き合ってる八雲を

御子柴がどういじるのか、とかも見てみたい(笑)。八雲の変貌に驚くんじゃ

ないかしらん。