ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

濱岡実「ひまわり探偵局でお茶をⅠ 春の記憶」(文芸社)

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とっても久しぶりのひまわり探偵局シリーズ。二冊同時刊行だったそうで、もう一冊

あるみたいです。実は、図書館の新刊案内で見かけた時、昔に出た作品の新装版

なんじゃないかと疑っていました。文庫ではなさそうだけど、どうなんだろうと。

まぁとりあえず一冊だけ借りて判断しようとこちらから読むことに。結果、ちゃんと

新刊だったので良かったです。とはいえ、エピソード0って感じですね。本書の

一作目が、シリーズ一作目の前日譚に当たるような感じ。語り手の菊野が、

陽向探偵の助手になったきっかけのお話ですね。とはいえ、実のところ、前二作を

読んだのがあまりにも昔で、主要登場人物すらほぼ覚えていなかったので、前日譚

なのはわかったものの、全然自分の中で繋がってないまま読んでたんですけど(

おい)。ま、読んでるうちに、陽向探偵のキャラと、おやじギャグを連発する

助手がいたってくらいは思い出しましたけどね。二人のキャラと関係が好きだった

筈なのに、なぜ忘れていたのか、自分(いつものことだが、私の記憶力はどうなって

いるのだ・・・)。

三作収録されていますが、ページ数は後ろの作品ほど少なくなってます。つまり、

一作の中編と、まぁまぁ長めの短編と、普通の短編、って感じの構成。

ほのぼのとした作風は相変わらずで、ほっこりしました。陽向探偵の、春の日差し

みたいな、麗らであったかい雰囲気がいいですねぇ。スイーツを美味しそうに

頬張る姿がなんとも可愛らしい。いや、中年のいいオッサンなんですけどね(苦笑)。

陽向探偵とさんちゃん(三吉さんの愛称)のボケとツッコミみたいな掛け合いも

楽しいですし。でも、推理の段になると、一転して立派な探偵らしくなっちゃう

辺りのギャップもいいですね。

一話目は、元古書店の店主が、奥さんが亡くなる直前に告げた謎の言葉の数々の謎を

解くというお話。奥さんが残した、いくつかの単語それぞれの意味に関しては、

ちょっと強引な部分も多かったものの、陽向探偵の洞察力の鋭さには感心しました。

時計で始まり、時計で終わる、奥さんが考えついた記憶装置には素直に感動しました。

少しづつ病状が悪化して行く中で、どうしても忘れたくないものを覚えている為に

施した記憶装置。頭のいい人だったんだろうな。切なくて、やるせない気持ちに

なりました。

二話目は、陽向探偵が不在の間の出来事なので、探偵役はさんちゃんに交代。

依頼人が6歳児だから、成り立ったとはいえ、終盤のさんちゃんの推理もなかなかの

ものでした。陽向探偵に鍛えられて、さんちゃんの推理力も上がっているのかも。

6歳児に合わせて、同じ目線で行動してあげているところが優しいな、と思いました。

モケーレ・ムベンベって始めて聞きました。そんなUMAがいるんですね。さんちゃん

が大事にしていたビー玉を、惜しげもなく虹の卵として、あゆみちゃんにあげて

しまえるところが、さんちゃんの良い所だな、と思いました。

三話目は、二話目で不在だった陽向探偵が、その間どうしていたのかが明らかに

されるお話。こちらも謎解きは、かなり強引な言葉の聞き取り違いで成り立っている

部分が多く、始めはちょっと首を傾げざるを得なかった。でも、終盤でその強引な

部分にもある程度の説明が成されていたので、溜飲が下がりました。ハンカチの木

というのがあるとは知りませんでした。ホウキの木は見たことあったけど。気に

なったので画像検索してみたら、なるほど、遠くから見たら、ハンカチがいっぱい

吊り下げられているように見えるかも、と思いました。

 

同時発売のもう一冊も、早く予約して読まなくては。