ミステリ読書録

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住野よる「麦本三歩の好きなもの 第二集」(幻冬舎)

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シリーズ第二弾。前作読んだ時、結構辛辣よりの感想だった覚えがあるんだけど、

なんとなく一作目を読んでしまったので、二作目も手に取ってしまいました(苦笑)。

相変わらず、三歩のぐだぐだうだうだした内面描写には度々イラッとさせられたの

ですが、読み進めて行くと、彼女のいいところも少しづつわかって行きました。

基本的にはだらけた性格だけど、何事にも真面目で一生懸命だし、たまに大胆

だったり、タトゥに憧れる意外な一面があったり。不思議と憎めないキャラクター

なんですよね。

出だしはやっぱり三歩のだらだらとした性格や、すぐに噛んでしまうセリフ等に

イライラして挫折しそうになったのだけど^^;なんとなくダラダラと読み続けて

いたら、知らないうちにハマって読んでるような所があって面白かった。三歩って、

割と意外性のある部分が多くって。読む度に新しい発見があるっていうか。底が

知れない子だなぁって思う。友達になりたいかというと微妙だけど・・・。

でも、到底共感出来ない部分も多いんだけど、共感出来る部分も意外とあったりして。

そもそも書店員なだけに、本好きという大きい共通点がありますしね。

辻村さん好きなのは嬉しかったな。小さい女の子と文房具屋で折り紙折るお話は

好きだった。孔雀の折り方を知っている文房具屋のおばあさんが粋でカッコよかった。

腕にはタトゥー入ってるし、何者!?って感じだったけど。三歩がタトゥーに

憧れているのは驚きだった。そういうタイプの子だと思わなかったから。でも、

温泉に入れないからまだ入れたくないって辺りは共感出来ました(笑)。私は

タトゥーなんて入れたいと思ったことはないけども。偏見はありますね、私も。

あとは、合コンの回が良かった。合コンで知り合った彼と東京タワー行った後、

その後どうなったのかずっと気になっていたので、ラスト一話で微笑ましい

気持ちになりました。その前、実家でお正月を過ごす章でも繋がっている仄めかしは

あったのだけど。恋には奥手の三歩が、少しづつ相手に好感持って進んでいるのが

わかるのが嬉しかった。

あと、その実家での章での、三歩の弟との関係も良かったです。職場では先輩

たちに可愛がられる立場の三歩ですが、弟の前ではお姉ちゃんしてるんですね。

まぁ、大分煙たがられてる感じもしましたが(笑)。でも、なんだかんだいって、

弟も姉のことを慕ってくれているのを感じました。ご両親との関係も、ああ、

三歩の家だなぁって感じがすごく出ていて、ほのぼのしててほっこりしました。

そういえば、三歩は、今回新人を教える立場になったんですよね。新人との

やり取りも可笑しかったなぁ。三歩が挙動不審すぎなのに、新人ちゃんもいい子で。

良い職場だなぁと羨ましかったです。

最後の怖い先輩とのお別れは寂しかったですけど、三歩の成長が伺えて

良かったですね。

三歩の何気ない日常を描きつつ、ところどころで生きる為に大事なことを教えて

くれている感じがしました。前作よりは作者の狙いが読み取れて、良い読者で

読み終えられた気がするな(笑)。