ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

早見和真「新!店長がバカすぎて」(角川春樹事務所)

本屋大賞候補にもなった前作『店長がバカすぎて』の続編。続編出るとは思わなかった

です^^;予想外に好評だったから、出版社側から要請があったのかもしれません

ねぇ。こういうネタは、本が好きな人なら大抵食いつきますからねー(お前だよ)。

本屋あるあるも出て来て、結構楽しめますしね。しかし、今回もいろんな登場人物

に何度もイラッとさせられましたけどね。

しかし、前作のラストをすっかり忘れていたのだけれど、あの店長って異動させられ

たんでしたっけね。本書は、あれから三年が経って、世の中がコロナ一色になった

後が舞台。

谷原京子は、<武蔵野書店>吉祥寺本店に勤める書店員。おバカな元店長の山本猛

が異動して以降、小柳新店長のもと、平穏な日々を過ごしていた。しかし、コロナで

状況が一変、書店は窮地に立たされ、スタッフの不満がすべて店長にのしかかった。

結局三年経ち、現場を抑えることが出来なかった小柳店長は結婚を理由に退職、

地方に飛ばされていた山本猛元店長が、店長として再び吉祥寺本店に戻って来る

ことに。しかし、店長として舞い戻って来た山本の振る舞いは相変わらず京子の

目に余った。しかも、なぜか山本は京子を自分の後継者として育てると息巻いて

いて――。

バカな店長、バカなアルバイト、バカな親父に、バカな社長ジュニア――前作

に続いて、呆れるような言動の人物ばかりが登場するので、かなりイライラさせ

られましたね。まぁ、作者としては『バカ』という言葉には愛情も込めて使って

いるのかもしれませんが・・・京子視点だととても愛情を持った言葉には感じ

られない為、やはり、同僚や周りの特定の人を指して『バカ』と言い捨てる所は、

あまり読んでいて気持ちの良いものではないなぁと思ってしまいました。まぁね、

確かに、イライラムカムカさせられるヤツばかりなんだけどさ。

今回は作品構成自体にもちょっとした仕掛けがあるので、必ず章の順番通りに

読むことをオススメ致します。っていうか、まぁ、連作短編って訳じゃないから、

順番通りに読まない人なんていないと思うけどさ(苦笑)。あ、あと、冒頭から

いきなり前作に関するネタバレが出て来るので、必ず前作を読んだ上で本書を

読まれることを強くオススメしておきます。てか、編集側は、冒頭にその旨きちんと

注意書きしておくべきだと思うんですが?ミステリじゃないからいいと思った

のか知らないけど、そういう問題じゃないと思う。こっちから読んだら、一作目

のラストの重要な場面の面白さが半減すると思うんだけど・・・。苦情が来る

レベルだと思うけどなぁ。

今回の作中でやたらに出て来る、『ステイフーリッシュ・ビッグパイン』

作者、マーク江本の正体に関しては、あの人かあの人のどっちかだろうなーと

思いながら読んでいたので、それほど驚きはなかったです。というか、だいたいの

人が予想がついてしまう人物かも?いろんなところでアナグラムが出て来るけど、

結局竹丸トモヤの正体は誰なんだ?あと、丸谷武智君は実在するのか?謎は残された

ままだったので、若干モヤモヤの残る読後感だった。ラストで新たな視覚の存在

も出て来るので、三作目を想定した上での本書だから仕方ないのかもしれませんが

・・・。5話目の仕掛けとか、ミステリのような構成で驚かされたところもあった

けど、こういう作品だと、ちょっとこの手の仕掛けが浮いてしまっているような。

細かい伏線が回収されてないから、余計にそう思っちゃったのかもしれませんが。

あと、びっくりしたのが、いくら前作のラストで山本店長が異動になって三年

会わなかったからといって、京子が山本店長に対する恋心を全く本書で忘れている

ところです。あの前作に出て来た唐突な恋愛要素は何だったんだ・・・。山本店長

への恋心どころか、京子には今回新たな恋の相手が出て来る始末(まぁ、その結末

はちょっとお粗末なものでしたが・・・)。

今回店長が戻って来たのに、店長への恋心は全くゼロになってしまったような感じ

だったのが不思議でした。一体作者は何が書きたかったのだろうか・・・。

うーん、好きな書店が舞台なので、面白いことは面白いのですが、なにか読み

終えてすっきりしないものが多かったような。三作目はどうしようかなぁ。