ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

東川篤哉「新謎解きはディナーのあとで」(小学館)

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久しぶりのシリーズ最新刊。もう続編出ないかと思っていたので、嬉しいです。

読み始めて、そういえば前作の最後で風祭警部って異動したんだっけ、と思い出し

ました。それがあったから、もう続編出ないと思ったような覚えも。しかし、随分と

あっさり国立署に舞い戻って来ましたね(苦笑)。あの終わり方は何だったんだ、

とツッコミたくなりましたが(笑)。まぁ、その辺りの軽さがこのシリーズの良い

ところでもあるのかもしれません。なんにせよ、このシリーズにはやっぱり風祭

警部のアホっぷりが必要不可欠なのでしょう。今回も、特に捜査の役に立つことも

なく(笑)、適当な命令を部下に出してはクズ上司っぷりを遺憾なく発揮して

下さっております(笑)。

未だにドラマのイメージが強く、ついついドラマの俳優を充てて読んでましたね。

シリーズ再始動で、もう1~2冊出たらまた映像化されるかな?櫻井くんもだけど、

あの頃よりも北川景子さんのスケジュール抑えるのが大変かもしれないなぁ(と、

ドラマ化するとも決まってないのに、取らぬ狸の皮算用なわたしなのであった)。

内容はもう、相変わらずと言うしかないですね。麗子さんと影山の掛け合いも

そのままだし、二人の関係が少しは変化しているかと思いきや、全くしておらず、

あくまで主従関係のまま(そりゃそうか)。影山の傍若無人な執事キャラも変わって

なくて嬉しかったです。

ミステリ的には、他の東川さんの作品と比べると、ちょっと薄味ではあったかな。

割とオーソドックスなトリックが多かった印象でした。でも、そこにちょっとした

プラス要素が含まれていたりするところは東川さんらしかったですけど。ま、この

シリーズは麗子に対する影山の毒舌キャラを楽しめればそれで十分満足できちゃう

ので。久しぶりに読んだ影山の毒舌、ちょっとキレがイマイチだったような気も

しましたが、二人のアホな会話はやっぱり読んでいて楽しかったです。

 

では、各作品の感想を。

第一話『風祭警部の帰還』

せっかっく本庁に栄転になったものの、あちらでも風祭警部を持て余したようで、

あっさり国立署に返されてしまいました。そりゃ、刑事としてはほとんど使い物

にならないもんね・・・(しーん)。

富士山の見える窓のトリックは、あまりにも使い古された感があって、全く新鮮さは

なかったです(苦笑)。まぁ、○○○に映った映像を窓に見立てるって辺りは

東川さんらしくて面白かったですけどね。

 

第二話『血文字は密室の中』

こちらも先行作品が山程ある内出血密室(という言葉を初めて知りましたが)もの。

ダイイングメッセージと内出血密室の真相には、なるほど、と思わされました。

薩摩切子の壺はもう少し重要な要素かと思っていたので、そこはちょっと拍子抜け

だったな。

 

第三話『墜落死体はどこから』

これは島田荘司ばりにアクロバティックなトリックで、私好みの真相でした。

まぁ、いろいろツッコミ所満載でもありましたけど・・・このトリックは、絶対

実現不可能という気もしますが・・・。まぁ、面白かったからいいか。ボルダリング

が出て来る辺りはちょっと現代っぽかったかな。

 

第四話『五つの目覚まし時計』

五つの時計が出て来る辺りは、鮎川哲也氏へのリスペクトでしょうか。微妙に

時間の合わないアナログ時計の謎には脱力。しかし、五つも目覚ましかけないと

起きれないってよっぽど寝起き悪い人ですよねぇ。私には考えられないなぁ(大抵

目覚まし前に起きてしまうタイプ)。五分前行動を心がけるのは大事なことですね。

 

第五話『煙草二本分のアリバイ』

私は煙草を吸わないので、煙草一本吸うのに平均四~五分かかるのは初めて知り

ました。『太った体型の犯人』の真相には驚かされましたねぇ。確かに、一瞬の

シルエットだけだったら、そういう勘違いは有り得そうだと思いました。

犯行動機にはゲンナリ。でも、そういう人間が確実にこの世にはいるだろうことも

知っているので。そんなことで人を殺すなよ、とは思いますけどね。

 

シリーズ再始動、ということで、まだまだシリーズは続くと思って良いのかな。

ファンとしてはどんどん書いて頂きたいところです。でも、できればそろそろ

烏賊川市シリーズの新刊が読みたいなぁ。