ミステリ読書録

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古内一絵「最高のアフタヌーティーの作り方」(中央公論新社)

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マカン・マランシリーズの古内さんの新刊。老舗の桜山ホテルに勤める遠山涼音は、

入社七年目にして、ようやく念願だったアフタヌーンティーチームに異動することが

出来た。桜山ホテルのアフターヌーンティーの開発を手掛けることが夢だった涼音は、

早速張り切って新しい企画を提案するが、シェフ・パティシエの飛鳥井達也に即座に

却下されてしまう。何かと突っかかってくる達也に嫌われているのではないかと悩む

涼音だったが、ある日達也の秘密に気づいてしまい――。

お菓子はご褒美だと語る大の甘党の祖父の影響で甘いもの、特にアフタヌーンティー

が大好きな主人公が、いろんな壁にぶつかりながら、仲間とともに最高のアフタヌーン

ティーのメニュー開発に挑戦するお仕事小説です。出だしは一人で張り切る涼音が

チームの中で空回りしがちだったけれど、少しづつパティシエの達也や他のメンバー

たちと協力し合あえるようになって、実力を発揮出来るようになって行く過程が

丁寧に描かれていてよかったです。もともと接客能力は抜群のものを持っていますし、

スイーツへの理解力もある女性ですしね。少しづつ達也との距離が縮まって行く

ところも個人的にはツボでした。途中かなりじれったかったですけどね^^;

アフタヌーンティーって、女性としてはやっぱり憧れがありますね。ただ、ホテルの

アフタヌーンティーなんてとても高くて手が出るものではないですけど。むかーしに、

友人と椿山荘のラウンジのアフタヌーンティーに、一度だけ行ったことがあります。

雑誌とかで取り上げられてて、行ってみたかったんだよね。椿山荘自体は、友人の

結婚式でも行ったことがありまして。記憶が大分薄れているのだけど、確か1月か

2月の真冬の日で、庭で集合写真を撮るって言われて、すんごい寒かったのを

覚えてます。でも、お庭が本当に見事なんだよね。写真スポットになってて。

だから、涼音が勤める桜山ホテルの描写読んで、椿山荘をイメージしてました。

で、最後に参考資料のところ見たら、椿山荘関係のものが入っていたので、

ああ、やっぱり!と腑に落ちる気持ちでした。あそこでアフタヌーンティー経験して

おいて本当に良かった~と思いました(笑)。今はもう高くて、とてもじゃないけど

手が出せないなぁ。それに、あんなにたくさん量も食べられない(よる年波には

・・・^^;)。本場のイギリスとか、スイーツ本場のフランスとかは、高齢の

男性とかも普通に食事の後でも、ガッツリ甘いもの食べたりしてますけどね。

フランス行った時、衝撃だったもんなー。いいおじいさんがめっちゃ甘そうな

ケーキにこにこして食べてて。素敵だなーと思いましたっけ。

でも、イギリスは学生時代にロンドンだけちらっと行ったことがあるんですが、唯一

の心残りが、本場でアフタヌーンティーを食べて来られなかったことだったんですよ

ね。時間が全然なくて、ゆっくりお茶したりできなくて。今思えば、ちょっと無理

してでも経験しておけば良かった。イギリスの食事は全然いい思い出がなくて、

せめてアフタヌーンティーが食べられていたら、また印象も変わってたんじゃないかな

って思うんで。イギリスに行く機会なんてもう二度とないだろうからなぁ。残念だな。

でも、華やかなホテルのアフタヌーンティーを提供出来る裏では、たくさんの

スタッフの苦労や努力があるんだな、と気付かせてくれる作品でした。どんな世界の

裏側もそうだとは思うけれど。達也の障害や他人からの差別のことなどに関しては、

いろいろ考えさせられるところもありました。達也のケースはなかなか稀なんじゃ

ないかなぁ。同じ障害を扱った作品は他にも読んだことがあるけれど。達也が

コンプレックスの壁を破って、世界に飛び出す勇気を持てて、本当に良かったと

思いました。涼音との距離は遠くなっちゃうだろうけど、それぞれに夢を持っている

二人なら、離れていても大丈夫だろうな、と思えました。

庭園の美しさと三弾重ねのスイーツの美しさ。絵力強いなぁ。

いつか私も最高のアフタヌーンティー、経験してみたいな。