ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

万城目学「ヒトコブラクダ層ぜっと 上・下」(幻冬舎)

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万城目さんの新作長編。久しぶりの新刊は、超ボリュームたっぷりの上下巻。

合わせて1000ページ超え。実は先に下巻が回って来てしまったんですよね。

どうしよう、どうしようと思っているうちに、下巻も回って来たので、なんとか

取り置き期限内に二冊同時に借りられて良かったです。ただ、本当は上巻先に

借りて、時間を置いて下巻を引き取りに行く、という形にしたかったんですけどね。

なんせ、かなりの分厚さなんで・・・。他の本との兼ね合いなんかもあって、

結局下巻の引き取り期限ギリギリまで待って、二冊同時に借りる形で折り合いを

つけることに。しかし、上巻読んでる時点で、読んでも読んでも終わらない地獄に

陥りまして。ストーリーに入って行けないわ、話が進まないわで、とにかく読んで

いるとすぐに眠気が襲って来てしまって。めちゃくちゃ苦戦しました。何度も

挫折の二文字が頭をよぎったんですけども、アマゾンのレビューとか読んでると、

下巻になると面白くなると書かれている方も多くて。まぁ、上巻でも面白いと

おっしゃってる方がほとんどなので、私の興味の方向性に問題があるだけだとは

思うんですけど・・・。とにかく、タイトルのヒトコブラクダ層に辿り着くまでが

長くて長くて何度気が遠くなりかけたことか。上巻の後半は、ほとんど意地でページ

をめくってた気がします・・・。冒頭、三兄弟がそれぞれが持つ特殊能力を使って

銀行強盗する辺りは、伊坂さんっぽいお話だなぁと今後の展開に期待まんまんで

読み始めたんですけどねぇ。そこからが全く予想外の方向性に進んで行くものだから、

話に全然ついていけなかったな。なぜ三兄弟が自衛隊に入ってイラク派遣されなきゃ

ならないのか、さっぱり意味不明だったし。恐竜にもメソポタミア文明にもさっぱり

興味が持てない人間には、ほんとキツイ内容だった。はてなの連続でしかない状態で、

なんとかかんとか上巻読破。上巻だけで、一週間くらいかかりました。これ、下巻

期限内に読み切れるだろうか、とこの時点で非常に不安でした。でも、下巻に入ると、

急にストーリーが動き出して、読みやすくなって、さくさく進むようになりました。

結局下巻は3日くらいで読了(終盤の300ページくらいはほぼ一気読みでしたし)。

下巻は兄弟の絆や自衛隊の上官との関係や、海兵隊のキンメリッジとの仲間関係

なんかにも読みどころがあって、ぐっと来るものがありました。基本のストーリー

が壮大過ぎて、なかなかついていけない部分も多かったのですが、終盤に一気に

腑に落ちない部分に説明がついて、それなりに大きな風呂敷を、きちんときれいに

畳んで終わるところはさすがだと思いましたね。まぁ、それでもとんでもない

荒唐無稽な物語なのは間違いないですけど。かなりファンタジー色も強いので、

その辺りのジャンルが苦手な人に受け入れられるのかはちょっと疑問も覚える

ところではありますけど。古代文明とか遺跡発掘とか恐竜とかに興味のある人には

楽しい作品だと思いますけど(個人的には、どれもほとんど興味ナシ)。

壮大なエンタメ作品なのは間違いないです。榎土三兄弟のキャラがいいですね。

それぞれに個性があって。恐竜が大好きな長兄・梵天古代文明大好きな次兄・

梵地、性格は穏やかだが戦うことが大好きな三男・梵人。そして、この三兄弟には

人には云えない特殊な能力がそれぞれ備わっている。梵天には、3秒だけ壁や

地面の下にもぐり込むことが出来る能力、梵地にはどんな言語も理解出来る能力、

梵人には3秒だけ先の未来が見える能力。3秒だけ有効な特殊能力ってのも不思議な

設定だなぁと思いましたけど。彼らになぜこの能力が備わってしまったのか、の

謎も最後にきちんと明かされます。その辺りは、完全にSF小説のご都合主義的設定

に近いなという感じではありましたけどね。

個人的には、三人の上官である銀亀三尉のキャラが好きでしたね。最初はちょっと

堅物過ぎてとっつきにくい感じもありましたけど。どんな場面でも、日本の自衛官

としての矜持を失わない姿勢には頭が下がりました。ただ、仲間が窮地に陥って

いる時には、さすがにもう少し融通利かせても・・・と思わなくもなかったですが

^^;でも、下巻の終盤、榎土兄弟たちに言い放った『あなたたちの怒りを、私に

預けて欲しい』以降のセリフにはしびれました。この時点ではもう三人の上官では

ないけれど、紛れもなく、彼女は三兄弟の上官としていい仕事をしたなぁと思い

ました。

いろいろハードな思いもしましたが、最後はそれぞれに夢が叶って良かったです。

できれば、銀亀三尉がオリンピックに行ける未来まで書いてほしかった気も

しましたが。まぁ、そこに向かって一歩を踏み出したことがわかっただけでも

良かったのかな。

上巻の時点では読み切れるか不安でしたが、なんとか全部読み切れて良かったです。

下巻は、万城目さんらしい荒唐無稽なノンストップエンタメで、らしさ満載

でした。できれば、上巻のダラダラ展開をもう少し凝縮させて、スピーディに

読ませてほしかった気もしますけどね。