ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

長岡弘樹「巨鳥の影」(徳間書店)

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長岡さんの最新短編集。読んでる時は全然気づいていなかったのですが、後から

調べたところ、生き物が出て来る短編集なのだとか。そういえば、どの作品にも

何らかの生き物が出て来てた・・・かも(気づくの遅すぎ^^;)。

相変わらず、予想の斜め上の着地点のものが多く、長岡さんはやっぱり短編の

名手だなと思わされました。たまにピンと来ないものもありますけどね。今回のは、

質の高いものが多かったと思いますね。

 

では、各作品の感想を。

『巨鳥の影』

犯人と共犯者との間の通信手段には驚きました。でも、実際実在する手法らしい

ですね。びっくり。

 

『死んでもいい人なんて』

犯人の動機を知って、被害者は自業自得と思ってしまいました。実際、『死ねば

いいのに』と思ってしまう人間はいます。殺していいとは思わないけれど。

被害者の子供にとっては、これで良かったんじゃないかと思えました。そういえば、

この作品の生き物って何だろう。人間(子供?)かな??

 

水無月の蟻』

亡くなった隣人が、主人公に蟻を貸してほしいと頼んだ理由には目が点になりました。

いくら何でも、そんな方法、上手くいくのかな?その場面を想像すると、背筋が

凍るような気持ちになりましたが・・・私だったら絶対ムリです・・・。隣人不在

を狙って隣に忍び込む主人公の気持ち悪さにもゾッとしましたけどね。

 

『巻き添え』

こんな方法で他殺を自殺にすり替えようとするなんて・・・捨て身もいいとこ。

母の愛は強しということなんでしょうが・・・異常です。

 

『鏡面の魚』

メモ代わりに鏡を使うって発想は、正直リアリティに欠けると思いましたねぇ。

今どきそんな人いますかね。ユーミンの『ルージュの伝言』思い出しちゃいました。

指示した文字の改変方法は、テレビで見たことがあるので想像しやすかったです。

でも、こんな方法で殺人を犯すなんて、医療従事者としてはありえない。身勝手な

犯行動機に腹が立つばかりでした。

 

『白いコウモリ』

冒頭で子供たちがコウモリを触るシーンにぞっとしました。噛まれる云々じゃなく、

コウモリってどんな病気持ってるかわからないから、絶対触っちゃダメって

言われてると思うんだけど。『きゅうけつき』の正体には、すぐに見当がつきました。

母親は、息子の未来を見越していたんでしょうね。

 

『見えない牙』

ラストの救いのなさはこれが一番じゃないでしょうか。娘は、ずっとこういう機会を

狙っていたんですかね。穴に落ちた段階で、オチはなんとなく想像がついてました。

そうじゃないといいなぁと思ってましたが・・・案の定のラストだった。まぁ、

主人公は自業自得な部分もあるとは思いますけどね。

 

『再生の日』

こんな風に指を再生させることって実際あることなんでしょうか。窃盗なんて

するから、バチが当たったんでしょうけど・・・盗んだモノが悪すぎましたね。

しかし、こんなモノを持ってスポーツクラブに行った主人公も頭おかしいです。

プラナリアは、むかーしに読んだ漫画に出て来たことがあって、不思議な生き物が

いるものだなぁと思ってました。その再生機能を医療とかに活用出来たらいいのに

なぁ。