ミステリ読書録

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京極夏彦「「おばけ」と「ことば」のあやしいはなし 京極夏彦講演集」(文藝春秋)

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作家だけではなく、妖怪研究家として活躍する京極さんが、全国各地で開催した

妖怪や幽霊やことばについて語った講演会の様子を一冊にまとめたもの。

東京で行われたものもありましたので、知っていれば参加したかった・・・!!!

コロナで最近は行われていないのでしょうが。落ち着いたら、また再開されるかも

しれないし、そうなれば東京に来て頂ける日も来るでしょう。行きたいーーーっ。

いろいろなお話が収録されていますが、どの講演でも、妖怪と水木さんとことば

に対する敬愛が溢れていて、素敵なお話ばかりでした。京極さんにかかると、

どんなお話でも説得力があって、面白く感じられます。会場にいた人も楽しかった

だろうなぁ。羨ましいぞ・・・。語り口もソフトで押し付けがましいところが一切

ないですし、あれだけの大作家なのに偉そうなところがみじんもなく、常に謙虚な

姿勢でわかりやすい言葉で語って下さいますし。おばけや物事やことばについて、

思わぬ視点から解説して下さっていて、目からウロコのことがたくさんありました。

以前の講演集の時にも感激したのですが、本は、作者が書いて世に出した時点で、

読者のものであって、作者の意図を汲み取る必要などなく、どんな読み取り方を

しても読者の自由だ、と断言して下さっているのが嬉しい。それが例え作品に

対する批判めいたものになったとしても、その人が感じたことがすべてだと肯定

してもらえるのは、ブログの記事に誤読だと批判コメントをもらったことがある

身としては、非常に励まされるものがありました。京極さんは読者に対して、本当に

優しいな。逆に、読者としても非常に優秀な方でもありますが。どんな本でも

面白く読める、というのはある意味ものすごい才能だと思います。面白くなく

感じたら、面白いと思えるまで何回でも読むっていうのですから。もう、本当に

本がお好きな方の発言ですよね。私には一生かかっても、その境地には至れそうに

ありません。だって、面白くなくて挫折しちゃう本が最近はかなり多いのですもの。

そういう本も、頑張って最後まで読めば面白く思えるのかなぁ。以前は意地で最後

まで読み通す根性もあったのですけれど、最近は時間がもったいないと思って

しまって、すぐに次の本に手を出そうとしてしまいます。京極さんを見習って、

もうちょっと頑張って読むべきなのでしょうか・・・。そうすれば、面白いと思えて

来ることもある・・・かどうかは謎ですが^^;読書スキルが違い過ぎて無理だろう

なぁ。苦手だと思う本でも、面白がろうとすることが大事、というのは肝に命じて

おきたいと思います。

今回も、水木先生に対する尊敬と敬愛の言葉がどの講演でも溢れていましたね。

水木先生が、妖怪という『事象』を、わかりやすい『キャラクター』として、

世間に認識させたことが、とても良く理解できました。今広く知れ渡っている

妖怪のほとんどが、水木先生によって描かれた妖怪の『アイコン』だということ。

すごいことをさらっとやってらした方なんだなぁ。妖怪業界のレジェンドなのは

もちろん知っていましたけれども。水木先生の功績は、今後どれだけ時間が経って

も色褪せることはないでしょうね。

『幽霊は怖くない』という説も、京極さんから解説されると「なるほど!」と思えて

しまいました。いや、怖いですけどね!?やっぱりね!?でもまぁ、たしかに、

呪われたりしなければ、ただ『いる』だけの幽霊は怖くない・・・かもしれない?

日本語という言葉に対するリスペクトも随所で感じられました。京極さんは、本当に

言葉を大事にしている方なんだなぁと感心しきり。

河鍋暁斎のお話も興味深かったなぁ。暁斎の絵、大好きだし、画集私も

欲しくなっちゃった(手元に置いておいたら怖そうだけど^^;)。

本当に、たくさん勉強になり、興味深い講談集でした。いつかほんとに、生で聴きに

行ってみたいなぁ。

もっともっと、取り上げたい言葉がたくさんあったのですけれど、とりあえず

きりがないのでこの辺で。