ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

京極夏彦/「豆腐小僧双六道中 おやすみ 本朝妖怪盛衰録」/角川書店刊

イメージ 1

京極夏彦さんの「豆腐小僧双六道中 おやすみ 本朝妖怪盛衰録」。

人を怖がらせることができる立派な妖怪になりたい豆腐小僧は、滑稽達磨とともに武者修行の旅に
出た。芝右衛門狸らによる〈妖怪総狸化計画〉。信玄の隠し金を狙う悪党(人間)たち。ゴタゴタ
に巻き込まれた小僧は…(あらすじ抜粋)。


なんとまぁ、豆腐小僧の続編が出ました。8年ぶりなのだそうです。っていうか、なんで今頃
続編!?と思ったのですが、アニメ映画化されたんですよね。それに一番ビックリですが。
一体どんな内容になっているのか、観てみたいけれど、ゆるすぎて、観ても何の足しにもならない
ような・・・(苦笑)。といっても、前作から8年も経っていると、もう豆腐小僧のキャラ
位しか前作の内容なんか覚えちゃいない訳で。ひさーしぶりに再会した豆腐小僧は、相変わらず
完全無欠のゆるキャラでした(苦笑)。んん。でも、このゆるさがたまんないんですよねー。
もう、萌え~~~って感じ。このアホさ加減に、妙~~~に母性本能をくすぐられちゃう訳ですよ。
が、しかーし。今回、豆腐小僧の出番があまりにも少ない。少なすぎる。ほんとに、お前は主役
なのか!?とツッコミたくなること必死。ここまで主役をないがしろにした作品も珍しいのじゃ
ないかしら。だって、全部で650ページ程もある分厚い本なのに、豆腐小僧が登場する割合
って言ったら、一割二割あるかなって感じなんだもの^^;;途中完全に消えちゃうし。おーい、
主役はどこ行ったぁー!?って、何度も心のなかでツッコミを入れつつの読書となりました・・・。
まぁ、そうは言っても、主役いなくても、全然物語は進んで行けちゃうんですよね。っていうか、
豆腐小僧がいた所で、別に物語が進むこともない訳ですし。だって、もみじ豆腐持ってるだけの妖怪
ですから。ただ、ぽやーんとそこに居るだけの存在。しかも、人間には感知出来ない存在ですから、
現実の事件には何の関わりも持てない。前代未聞のヒーローですよね・・・え、ヒーローじゃない?^^;

人間社会の方では悪人たちがいろいろごちゃごちゃと悪だくみしたりして、いろんな小悪党が
入れ替わり立ち代わりいっぱい出て来るんで、結構人物関係は複雑。その小悪党たちの背後に
妖怪たちがくっついていて、彼らに憑いて(?)いる妖怪間でも何やらごちゃごちゃと小競り合い
があったりして、途中から何が何だか状態。そうした人間側が私利私欲の為に悪事を働こうと
画策してる間、豆腐小僧はないがしろにされっぱなしで、主役不在のまま物語の大部分が進んで
行くので、そこはちょっと残念だったかな。まぁ、その場に『居た』としても、何がどうなる
訳もないのだけれど(苦笑)。純粋に豆腐小僧があてもない旅を続けるような内容だった方が
個人的には楽しめたと思うんですけどね。豆腐小僧と滑稽達磨のやり取りが可愛くて可愛くて。
それだけで私的には十分満足出来るんですもん。人間パートなんかいらないんだけどなぁ(極論)。
しかし、途中で完全に豆腐小僧の存在が消えてしまって、一体どうなるのだ、とはらはらしました。
そして、終盤再び登場したと思ったら、ビジュアル変わってるし^^;;河童小僧・・・はなんか
あんまり可愛らしい感じがしなかったぞ^^;
でも、最後の展開にはちょっとビックリ。まさか、まさか、あの豆腐小僧が妖怪界の革命児に
なるなんて!!(え、言い過ぎ?でも、一瞬とはいえ、人間の前に○○た訳ですからねぇ・・・)

豆腐型の変形サイズの製本は相変わらずちょっと読みにくいのですが(^^;)、でも、表紙の
愛らしさとも相まって、なんだか見ているだけで癒されたのでした。
文庫でも新刊(?)が出ているらしいので、そちらもチェックしなければ~。

『もみじ豆腐を持つことだけ』に存在意義がある妖怪、豆腐小僧。こんな妖怪を主役に作品を
書いてしまうところが京極さんならではですね(苦笑)。
あー、面白かった。