ミステリ読書録

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京極夏彦/「ヒトごろし」/新潮社刊

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京極夏彦さんの「ヒトごろし」。

 

殺す。殺す殺す。ころしてやる――。新選組の闇に切り込む禁断の異聞! 人々に鬼と恐れられた
新選組の副長・土方歳三。幼き日、目にしたある光景がその後の運命を大きく狂わせる。胸に
蠢く黒い衝動に駆られ、人でなしとして生きる道の先には? 激動の幕末で暗躍し、血に塗れた
最凶の男が今蘇る。京極夏彦史上、衝撃度No.1! 大ボリュームで贈る、圧巻の本格歴史小説の誕生
(紹介文抜粋)。


京極さん最新作。総ページ数1083ページ。読み終えるまで6日かかりました・・・。
時は幕末、主役は新選組土方歳三。時代物が苦手で歴史オンチのワタクシ。いくら
大好きな京極さんでも、このページ数でこの題材。読むか読むまいか、ひっじょーーーーに
悩みました。スルーすることも考えたのだけれど、京極さんの時代物なら今まで難なく
読めて来た。だからきっと、大丈夫!と、根拠のない自信をもとに、借りてみました。
・・・が。うーーーおーーーーぅ。めっちゃしんどかったよ!!読んでも読んでも
終わらない地獄に加え、とことん興味のもてない幕末事情。ページが進まない、進まない。
しかも、主人公の土方が、全く好感持てないキャラ造形になっていて。これはこれで
新しい解釈だと思って受け入れればいいのだろうけれど、さすがに、人を殺したいだけの
キャラってのは、ねぇ。新選組作ったのも、罪に問われずに大義名分で人が殺せるからって
だけだし。そんなキャラにしちゃってよかったのか・・・。新選組の美青年、沖田総司
のキャラ造形も酷い。今でいう、サイコパスじゃないか^^;;土方に言わせれば、
周りの人間はみんな莫迦ばっかりだし。まぁ、ある意味、今までなかった新選組なのは
間違いない(多分)わけで、斬新とも云えるのでしょうが。
しかしほんと、幕末事情に全く関心のない人間が読むと、こういうお話は苦痛なだけ
なんですね・・・。京極さんの小説で、こんなに読むのに苦戦したのは初めてかもしれない。
これだったら、『どすこい(仮)』とか『南極(人)』とかのがはるかに面白かったと思える。
ほんとーに、読んでて苦しかった。早く終わりたい、違うお話が読みたい、ミステリーが
読みたいーーーと内心叫びながら読んでました(笑)。っていうか、だったらさっさと挫折すりゃ
いいじゃん、って話なんですけども、なんか読み始めてしまった以上、もう後には引けない
っていうか。京極さんの作品じゃなかったら、多分最初の50ページくらいのところで
さっさと挫折してたと思うんですけど。もう、最後は意地しかなかったです。物語の
終わりとか歳三の最後がどうなるのかとか、そういうのはもうどうでも良かった。
いや、あの、多分、幕末とか歴史小説とか好きな人は、面白く読める作品だと思うんですよ。
単に、私が苦手なだけです。ほんと、この手のジャンル苦手なんだなって、今回改めて
再認識させられました。幕府やいろんなしがらみに踊らされて、人が次々と殺されて行く。
殺す方もとりわけ何かの感慨がある訳でもなく、邪魔だから殺す。裏切ったから殺す。
将軍の為に死を選び、自決したり。なんだか、命の重さが軽く扱われ過ぎてて、殺伐と
していて怖かった。戦国の世ってのはこういうものなんだろうけれども。
唯一好きだったのは、土方と涼とのやり取りの部分。土方に殺されたい涼と、死にたい
人間を斬る気がせず、冷たくあしらう土方。殺せ、殺さないのやり取りは一見殺伐と
しているのだけど、何かそれだけじゃない感情が隠されているのじゃないかと思いながら
読んでました。だから、あのラストは、やっぱり、と思えましたし、胸に迫るものが
ありましたね。涼の中には、土方への愛しかなかったんだなぁ。最後だけは、切なくて
京極さんらしい愛の物語になっていると思えました。
それにしても、京極さんでも、単行本で1000ページ超えの作品って初めてじゃないかな??
数々のお弁当箱本を出版してきた京極さんですが、その中でも一番のボリュームじゃない
かしら。ずっと読んでると腕は痛いし肩は凝るしで、大変だった^^;間違いなく
凶器になるよ、コレ(苦笑)。
以上、大した感想もないのだけど、とりあえず読み切ったという充足感だけは得られ
ました(笑)。
幕末や新選組に興味のある方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。