ミステリ読書録

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辻村深月「闇祓」(KADOKAWA)

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辻村さん最新作。自分の闇を周囲に振りまき、周囲の人々を闇に落として行く

『闇ハラ』をする人と、それをされた側の人々の物語。一話目に出て来た、闇ハラ

の被害に遭った女子高生ヒロインと、彼女を救った少年がその後の作品でも

共通して出て来る連作ものかと思ったのですが、続く二作目では全く別の

登場人物が出て来て、一話目の登場人物とは全く繋がりがなさそうに見えたので、

かなり面食らわされました。ただ、共通しているのは、どちらの作品でも闇ハラが

テーマになっているという点。それは三話目、四話目も同じ。とにかく、読んで

いるだけで気が滅入って来るようなイヤ~な話が畳み掛けるように出て来て、

かなりメンタルやられました。

どのお話でもとんでもない闇ハラモンスターが出て来るので・・・キツかった。

でも、実際いそうなところがまたイヤなんですよね・・・。モラハラ彼氏、

パワハラ上司、マウントママ友、自分の正しさを押し付ける友達――程度は

違えど、こういう言動をする人はどこにでもいる。でも、それが行き過ぎると、

やられた方はたまったものではありません。それが身近であったら尚更。

こんな人達の標的になったが最後、どこまでも自分も闇に落とされてしまう。

最初は良くても、少しづつその言動がエスカレートして闇ハラになっていく

過程がリアルで怖かった。

三話目の途中でようやく一話目とのリンクの片鱗が出て来て、これはやっぱり

全部が繋がっていそうだぞ、と思い始めました。時系列がわからなくて、

混乱したところもありましたけど。ラスト一話でちゃんとそれも綺麗に繋がる

ので、そこまで来てやっと溜飲が下がりました。

まぁ、個人的には、一話目の白石少年が各作品に登場して、闇ハラをする人物

の闇を祓って行く一話完結形式の連作集、とかの方が好みだったとは思いますけど

ね。白石少年のキャラクターは結構好きでしたから。一冊通しての仕掛け、という

意味では、本書の形で良かったのでしょうけど。でも、なんか一作ごとにイヤな

感覚が残ってしまって。気持ち悪いまま次の話に突入するから、それがどんどん

積み重なって行くのがしんどかったな。イヤミスとしては成功なんでしょうけどね。

最終話で白石少年(一話目から二年経っているので、青年とするべき?)の出自や

闇祓についても明らかになりますが、なんとなく全部がすっきりする終わり方とは

云えなかったような。例の家族についても、完全に決着がついたって感じでも

なかったし。なんで彼らは竹が苦手なのかとかもよくわかんないままだし。続編を

想定しているのかな。まだ同じような闇ハラ家族が全国にいそうですしねぇ(怖っ)。

白石君はこれからも闇祓を続けて行くのかなぁ。澪との関係はどうなるのかも

気になりますし。これで縁が切れちゃうとしたらちょっと悲しい。

それにしても、陰々滅々とした話だったな。辻村さんのイヤミスは、とことん

容赦がないなぁ。もうちょっと心に優しい作品が読みたいな。前作のも辻村さん

っぽくない作品だったしさ。リーダビリティはさすがでしたが、ページをめくる

につれて、どんどんイヤミス度が上がって行くのがすごかった。表紙や装丁

も含めて、徹底して人間の心の闇をフューチャーした作品だと思いました。

どんなホラー読んでも、最終的に一番怖いのは人間だったりしますからね。

これを読んで、闇に落とされる人間がいないことを願います・・・。