ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

辻村深月「Another side of 辻村深月」(角川書店)

一冊まるごと辻村深月を特集したファン必見のガイドブック。書き下ろし短編、

ご自身による全著作解説、伊坂さん宮部さんとのスペシャル対談、各著名人

からの豪華メッセージ、未収録短編などなど、とにかく読みどころ満載。辻村

ファンならどこを読んでも楽しめると思います。

読み終えて一番感じたことは、辻村さんって、ほんと、いい意味で人たらしだなぁ

ということ。誰と会っても謙虚で相手へのリスペクトが感じられるので、一度

出会った人はみんな辻村さんの虜になってしまう。作家だけではなく、様々な

ジャンルの人から認められているし、愛されているのがよくわかりました。

伊坂さんとの対談が嬉しかった。伊坂さんが作家さんと対談してるのって、ほとんど

読んだことなかったので新鮮だったな。ご自分の本でアーティスト(斉藤和義

さんとか)と対談してるのとかは読んだ覚えあるんですけど。辻村さんいわく、

『すべての作家は伊坂幸太郎になりたい』らしい・・・まぁ、さすがにすべての

作家はってのは極論すぎるでしょうが、言いたいことはわからなくもない。伊坂

さんの文章とか洒脱な作風って、唯一無二の才能って感じがするからね。辻村

さんの伊坂さんへのリスペクトがすごく伝わって来る対談でしたね。

宮部さんとの対談はまた違った雰囲気でしたが、やっぱりお互いへのリスペクトが

伝わって来ました。今となっては大作家となった宮部さんですが、辻村さんを

始め、年下の若い世代の作家さんに対する目線が本当に温かくて優しい。ご自分は

もう隠居間近、みたいなことをおっしゃっていたけど、まだまだ書いて頂かなくては

困ります。杉村シリーズだって、やっと主人公が探偵になったとこなんですからね!

辻村さんご自身による自著解説を読んでいたら、デビュー作からめっちゃ読み返し

たくなりました(笑)。まぁ、私の初辻村作品はブログ友達のゆきあやさんから

お薦めして頂いた『凍りのくじら』だったのですけどね。それで一気にファンに

なって、手当たり次第その時点で出ている作品読んでいったのだったなぁ。途中

からはリアルタイムで追いかけているので、著作はほぼすべて読んでいます。ただ、

映画ドラえもんの原作小説と、出ているのを知らなかった絵本は未読ですけども。

各方面の著名人から辻村さんへ向けたメッセージのコーナーで、『イチオシの

辻村作品』を挙げてもらっているのですが、みんなそれぞれに思い入れのある

作品が違っていて、興味深かったです。意外とデビュ―作の『冷たい校舎の時は

止まる』を挙げている人が多かったような。私がもし選ぶとしたら・・・うーん、

難しい、けど、やっぱり初めて読んだ『凍りのくじら』かなぁ。『ぼくのメジャー

スプーン』と『スロウハイツの神様』と『オーダーメイド殺人クラブ』も捨て

がたい。『名前探しの放課後』も好きだしなぁ。うわー、選べない!!!でも、

やっぱり比較的初期の頃の作風の方が好きだったんだよなー。やっぱり、恋愛要素

が入っているものが好きなんだよね。辻村さんの、恋愛要素でのどんでん返しの

仕掛けがツボなんで。またそういうの書いてくれないかなぁ。

他にも、本当に幅広いジャンルの人々からコメントが寄せられていて、どんな

ジャンルの人からも愛されているなぁとしみじみ感じさせられました。

意外な作家さんとの繋がりなんかも知れて嬉しかったな。高田崇史さんと

高里椎奈さんと椹野道流さんとの繋がりにはビックリ。なんでそこで繋がるの!?

って思いました(笑)。四人の会話、聞いてみたいなぁ。

各作家さんから辻村さんへの10問の質問コーナーで、やっぱり道尾(秀介)さん

がフザケてるのが面白かった。確か、米澤さんの時も全然質問になっていなかった

ような覚えが。道尾さん、真面目にやってください(笑)。あと、村田沙耶香

さんからの質問が、村田さんらしすぎて、苦笑いするしかなかった(苦笑)。

もう少しで出る予定の新作のスピンオフも収録されています。コロナ禍の高校生が

主人公の青春小説だそう。とっても面白そう。読めるのが楽しみ。

辻村ファンなら絶対読んで損はしないスペシャルガイドブックだと思います。

装丁もかっこいいので、手元に置いておきたくなる一冊でしたね。