ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

米澤穂信「米澤屋書店」(文藝春秋)

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米澤さんの本に纏わるエッセイ集。国内海外のお薦め本を紹介しまくっております。

とても読み応えありました。本を書店に見立てて、章立てを本棚ごとに分けて

いるのも面白かったです。

例を紹介しますと、<選書棚><乱読棚><愛書棚><遊歩棚><書外棚>

<バックヤード><私室>

それ以外に、気鋭の小説家さんとの対談もいくつか収録。とにかく、ほぼほぼ

全部が本にまつわる文章です(一部、映画評やら旅行記めいたページもありますが)。

何度か、米澤さんご自身は、決して読書家ではない、という趣旨の言葉が出て来る

のですけれど、私からすれば、もう、とんでもない読書家としか思えません。

確かに上には上がいるでしょうけれど・・・米澤さんレベルの方が読書家じゃない

としたら、大抵の人は読書家って云えないと思いますよー・・・。

ただ、残念ながら米澤さんの好みと私の好みはほとんど重なっておらず、読んでいた

作品はごくわずかしかなかったです。ミステリが山程紹介されているんですけどね。

海外ミステリや国内でも私の守備範囲外の作家さんのものが多くって。正直、

これは読みたい!と思ったものはあんまり・・・。海外ものは、一時期ブログで

月イチ企画というのを立ち上げて、月に一冊海外作品を読む!という企画を

個人的にやっていた時期があったので、その時に読んだものがちらほら出て来た

のは嬉しかったですけども(意思の弱さが災いして、いつの間にか企画は立ち消えて

しまった・・・)。特に、ピエール・シニアックの『ウサギ料理は殺しの味』

何度も紹介されていたのが地味に嬉しかったですね。どんな内容かは全然覚えて

いないのだけれど、アホみたいなユーモアミステリで、やたらと印象的な作品だった

ってのは覚えてるんで。記事書いた覚えがあるんで、これを機に読み返そうと

ブログ内検索したんだけど、どうしてもヒットしない。一体どこに消えてしまった

のだろうか・・・謎。ヤフ―ブログの時はINDEXがあったから記事探すのも楽

だったんだけどねぇ。消滅しちゃったもんなー^^;

歴史ものとか海外ものとかは、ほとんど未知の世界って感じでした。翻訳ものが

好きな人なら、ものすごーく参考になる本だと思うな。買って手元に置いて

おきたいと思うはず。何作かはこれは読んでおかねば、と思うものもあったので、

機会を見て手にとってみたいです。

国内ものでは、連城三紀彦泡坂妻夫両氏の作品は、改めてもう少し読んでおかねば

と思わされましたね。どちらもミステリの大御所ですが、数えるくらいしか読めて

いないので。米澤さんが、そんなに泡坂さんのことを敬愛しているとは知りません

でした。一度だけ会えるかもしれない機会があったのに、結局叶わなかったという

のが切なかった。米澤さんの今の活躍を見て、泡坂さんはどう思ったのかな。

きっと、いろいろ聞いてみたことがあったと思う。

米澤さんの本棚には圧倒されっぱなしでしたが、個人的には合間合間に挟まれて

いる四人の作家さんとの対談が興味深かったです。柚月裕子さん、麻耶雄嵩さん、

有栖川有栖さん、朝井リョウさん。一番面白かったのは、朝井さんとの対談

かなー。他の作家さんとは割と高度なミステリ対談って感じなんだけど、朝井

さんはミステリ作家じゃないから、割と一般的なことをフランクな感じで話して

いて、楽しかった。お互いにお互いの作品をリスペクトしているところも微笑ま

しかったですしね(特に朝井さんの方が)。朝井さんの人柄の良さがにじみ出て

いたのも良かったです。

あと、正史のお薦めで『夜歩く』が紹介されていたのも嬉しかった。私も正史の

作品で一番衝撃を受けた作品なので。もちろん、本陣とか犬神家とか好きな作品は

他にもたくさんあるのだけれど。

恩田陸さんのお薦めで『ユージニア』が挙げられていたのは意外だったな。あれは

いろいろと物議を醸した問題作でしたよねぇ。謎が謎を呼ぶ、みたいなね。

欄外の自己解説を読むのも興味深かったです。字が小さくてちょっと読むの大変

でしたけれど^^;

とにかく、全編に亘って米澤さんの本への愛が感じられる一冊でした。もっと

もっと、取り上げたい箇所があったと思うんだけど、キリがないのでこの辺で。

米澤ファンにはもちろん、あらゆる本好きさんに是非読んで参考にして頂きたい

ですね。

装丁もカッコよくて、本棚に並べておきたくなりました。