ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

湊かなえ「残照の頂 続・山女日記」(幻冬舎)

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湊さんの新刊。以前読んだ『山女日記』の第二弾。副題に『続』と入っているけど、

前作との繋がりは特になさそうです(前作の登場人物とか全然覚えてないので・・・

もし繋がりがあったらゴメンナサイ^^;)。山岳小説第二弾って意味での『続』

なんだと思うんですけどね。

山に登る女性たちの物語ばかりを集めた中編集。四作収録されています。今回も

いろんな山が出て来ますが、どれ一つも知らなかったです^^;北アルプスとか

立山とか安達太良山とか、名前くらいは知っているけれどさ。それぞれの主人公が

山に登るのは、それぞれに理由があって、それぞれにドラマがありました。私が

一番好きだったのは、冒頭の後立山連峰のお話かな。65歳と42歳の親子

ほど年の離れた女性二人が長野の五竜岳に登る話。ガイドの山根と40代の方の

女性との険悪な雰囲気に何かありそうな気はしていたのですが、過去にああいう

関係があったと知って、腑に落ちました。二人の関係が最後どうなるのかドキドキ

しましたが、良い方に進みそうで嬉しかった。お互いの誤解がもう少し早く解けたら

良かったのに、とも思いましたけど、これからまたいくらでも時間は作れるでしょうし

ね。

二作目の北アルプス表銀座は、音大生二人が、失踪した青年への思いを秘めて

北アルプスの山に登る話。なかなかにこじれた三角関係に戸惑いつつ、失踪した

ユウがどうなってしまったのか、はらはらしながら読みました。ユウはどこに行って

しまったのか。その答えは、ラストに仄めかされているのだけど・・・終盤だけ

ファンタジック(いや、ホラー?)な展開になって面食らいました。えぇ・・・。

三作目の立山剱岳は、卒業後に山岳ガイドになりたい女子大生の娘と、

それを反対する母親が立山剱岳に登る話。母親が娘の夢を応援出来ない理由も、

ただむやみに反対してるのではなく、理由があってのことなので、理解できました。

私に娘がいて、同じことを言い出したとしても、過去にああいう経験をしているなら、

絶対反対してしまうと思うな。でも、二人で山を登っていくうちに、少しづつ

わだかまりが溶けて行くのがわかって、ほっとしました。

四作目の武奈ヶ岳安達太良山は、長く音信不通になっていた友人二人の、

30年ぶりの書簡交換を綴った作品。久しぶりにもらう手紙がこんなに長かったら

面食らいそうだけどな・・・。どちらの手紙も、一体何枚分になったのやら。

ちょっとした小説読んでる気分になるんじゃないかなぁ(小説だけどさ)。

なんとなく仲違いしたまま、長年疎遠になっちゃうことってありますよね・・・

(←身に覚えある人)。でも、山に登ったことが、手紙を出すきっかけになり、

またお互いの近況を報告し合える仲に戻れてよかったです。きっとお互いに、

ずっと心の中では相手のことを案じて会いたいと願って来たのでしょうね。

どの作品読んでても思ったけど、山に登ると人は素直になれるのかな?山の澄んだ

空気や、雄大な自然を前にすると、そうなっちゃうのかも、と思えました。

まぁ、だからといって、山に登りたくなったかというと・・・全然なってないの

ですけれどね(ズコーw)。

コロナ禍になって、密にならない山登りって、更に人気が出ているのでしょうね。

近場の高尾山なんか、休日すごいらしいですからねぇ。かえって密になってるって

もっぱらの噂だったり(ダメじゃんw)。

湊さんは本当に山がお好きだんだろうなぁと思わされました。そのうち、山渓

山と渓谷)とかから寄稿依頼が来そうだな(笑)。