ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

太田忠司「鬼哭洞事件」(東京創元社)

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ほんっとうに久しぶりの狩野俊介君シリーズ。このシリーズは、初期作品の数作

しか実は読んでいなくて、自分でもどれを読んでいるのか全く覚えていなかったり

します。でも、久しぶりに俊介君の新作が出たということを図書館新作情報で

知り、懐かしくなって予約してみました。登場人物は、保護者で私立探偵の野上

さんと、飼い猫ちゃんがいたってくらいしか覚えてませんでした^^;飼い猫の

ジャンヌは、私のイメージでは長毛種だったんだけど、表紙イラストとか内容

読んでたら、そうじゃなかったみたいで。誰か別の作家のキャラクターの飼い猫と

混同しちゃってたのかな。

新作自体も11年ぶりに出たそうで(私が読んでからはもっと時間経ってると思う

けど)。シリーズ一作目が出てからは、なんと30年が経っているのだそう。

しかし、一作目から本書まではったの一年半しか時間が流れていないという・・・

恐るべきサザエさん現象(笑)。一作目で小学6年生だった俊介君は、本書では

中学2年生になっております。年を取らなくて羨ましいわぁ(笑)。

内容的には、かなりオーソドックスな本格ミステリ。というか、ミステリ的には

あまり特筆すべきところはなかったかなぁ。洞窟内に作られた奇妙なお屋敷での

殺人とか、村に伝わる神楽を絡めた伝統行事とか、個人的にツボに来るような

ガジェットもりもりだったところはかなり好みでしたが。村に代々伝わっている、

神楽の考察の部分は面白かったです。民俗学とミステリーを絡めた作品が個人的に

すごく好きなので。

犯人や動機には、もう一捻り欲しかった気もしました。そちらよりは、神楽の真相

の方に比重を置いているせいかもしれませんが。

俊介君が、探偵としてどう振る舞えばいいのか悩むところは、初々しくて良いですね。

謎を解いた後の犯罪者やその家族のその後にまで憂慮するところに、俊介君の

人柄が表れていて、胸を打ちます。本当に優しい子なんですよね。悩める俊介

君を、優しく見守る野上さんの優しい目線も微笑ましいです。このシリーズは、

少年探偵・狩野俊介の成長を描くことが一番のテーマなんでしょうね。一作ごとに、

探偵として成長していく姿を丁寧に描きたいと思われているようで(あとがき参照)。

だから、これだけ長い期間書き続けられているのでしょう(インターバルが

ちょっと、長すぎな気もしますが^^;)。

読めていない作品もたくさんあるので、機会があったら読んで行きたいなぁとは

思いますが、図書館に置いてあるのかしらん(閉架扱いの作品もありそう・・・?)。

今回初登場した烏丸孔明は、今後、俊介君の探偵としてのライバルになるので

しょうか。実は、読んでいる時、前にどこかに出て来たキャラクターなのかな、と

思ったりもしてたんですが、あとがきで、今回初登場ということがわかりまして。

傍若無人な振る舞いとか、自分の興味のあることにしか反応しないところとか、

なんだかあまり好感持てるキャラではなかったのですが。根っからのお人好しで

優しい俊介君と対照的なキャラを出したかったのかな。今後の二人の関わりも

気になるところです。というか、また続編が出ることがあるのかな。読者の需要

次第ということなので、きっと出ると信じたいですけどね。