26歳で勤めていた書店が閉店し、職を失った一葉は、亡き祖母が参加していた
連句会『ひとつばたご』で祖母の代わりにお菓子番を務めることに。月に一度
祖母が指定していたお菓子を買って、連句会に参加するのが楽しみになっていた。
その傍ら、書店員時代の経験を生かして、ポップ作りの仕事もポツポツと入る
ようになっていた。そんな時、連句会のメンバーの一人から、イベントで売る
焼き菓子のタグを作って欲しいと頼まれて――。
今回も、連句の奥深さをしみじみと感じる素敵な内容でした。亡くなった人への
想いも、言葉にして残して行けるところがいいな。連句の複雑なルールは何度
説明読んでもなかなかピンと来なかったけれど・・・。参加しているメンバー
ですらなかなか覚えられないというのだから、相当なものですよねぇ・・・。
いろんな人が作った句が繋がって行くところがとても興味深い。ひとつの連句の
中に、いろんなタイプの句が入るけど、ちゃんと繋がっていて。ひとつの世界が
構築されていく感じ。ひとりで詠む俳句や短歌も良いけれど、複数人で繋げて
詠んで行く連句というものは、全く違った魅力がありますね。ひとつばだごの
メンバーもみんな素敵な人ばかりですし。穏やかな句会の雰囲気がとてもいい。
一葉が持って行ったお菓子を、みんなで食べながらわいわい、いろんな話をするのも
楽しそうですし。コロナ禍は特に反映されてないようなので、コロナ前の話という
設定なのかな。お菓子をみんなで食べるという行為がなくなってしまうと、お菓子番
という設定も台無しになってしまうしね。
連句会のおかげで、一葉の新しい仕事も決まってほっとしました。ブックカフェで
働けるというのは、私からしても羨ましい。元書店員の一葉にとって、一番相応しい
仕事が見つかって良かったなぁと思いました。今後は、本のポップ作りという、
一葉の本来の能力が発揮されて、面目躍如といった場面も見られそうかな。
ひとつばたご発足の理由も明らかになりました。一葉の祖母・治子さんの素晴らしい
人柄が明らかになり、心が温まりました。航人さんも、治子さんによって救われた
ひとりだったんですね・・・。亡くなってしまって、本当に残念です。でも、その
遺志を継いだ一葉が、治子さんの代わりに連句を続けることで、治子さんの想いや
願いも引き継いで行けるところが素晴らしいな、と思いました。
人と人、言葉と言葉を繋げる連句の魅力にどっぷりはまった一作でした。