ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

大山誠一郎「記憶の中の誘拐 赤い博物館」(文春文庫)

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『赤い博物館』シリーズ第二弾。とても好きな作品だったので、続編が出て

嬉しい。少し前にアンソロジーで一作読んでいたので、もしかして二作目出る

かも?とは期待してたんですけどね。

未解決の犯罪事件の遺留品や書類を収蔵する警視庁の犯罪資料館、通称

<赤い博物館>の館長緋色冴子と、その助手寺田聡が、未解決の難事件を再捜査

して解決するミステリー。

今回も、粒ぞろいの四作が収録されています。どれも素晴らしい出来でした。

前作では、現場に行ったり容疑者に会ったりするのは完全に寺田に任せて、雪女こと

緋色館長は博物館の中で推理する安楽椅子探偵の役割でしたが、今回は何の心境の

変化なのか、どの作品でも寺田と共に外に出て行動していました。コミュニケーション

能力は相変わらず皆無でしたけどね^^;でも、寺田の存在が、少しづつ彼女の

意識を変えて来ているのかなぁとは思いました。良い傾向なのかな。

では、各作品の感想を。

 

『夕暮れの屋上で』

23年前、校舎の屋上で二年生の女子生徒が亡くなった。彼女は、その直前に『先輩』

に告白していた。彼女を殺した『先輩』とは誰なのか?

これはだいたい真相の予想がつきました。『先輩』の正体も、多分そういうこと

なんじゃないかな~と思いましたし。犯人も予想通りでしたね。珍しいことも

あるもんだ(笑)。

 

『連火』

24年前に東京都西部地域で連続して起きた放火事件の真相とは?

舞台が地元だったので、ちょっと嬉しかった(放火事件の舞台だから複雑では

ありますが^^;)。犯人が連続して一戸建てだけを狙って放火していた理由には

目が点。身勝手な理由で家を奪われた被害者たちが気の毒でなりませんでした。

 

『死を十で割る』

15年前、赤羽の河川敷で起きた、バラバラ殺人事件の真相とは。

遺体を10のパーツに分けた理由には唸らされました。犯人がそうしなければ

ならなかった推理過程にも。ひとつひとつの伏線がきれいに真相に向かって効いて

くる過程が、読んでいて気持ち良かったです。

 

『孤独な容疑者』

24年前、自宅マンションの一室で男が撲殺された事件の真相とは。

これはアンソロジーで既読。改めて読んでも完全にミスリードされてしまった^^;

しかし、同じ会社にあれほど同僚から借金する人間が多数いるってのはちょっと

リアリティがないように思いましたけれど。

 

『記憶の中の誘拐』

26年前、寺田の友人の身に起きた誘拐事件の真相とは?

誘拐事件の真相にはなるほど、と思わされました。車のトランクのゴムマットの

臭いが苦手という情報だけで、誘拐事件すべてのからくりを見抜いてしまう冴子

さんの慧眼には脱帽でした。

 

 

ドラマ化された際に、冴子さん役は松下由樹さんだったとか。さすがに雪女の

イメージとはかけ離れているよなぁ。私の最初のイメージだと菜々緒さんなんだ

けど、冴子さんの年齢は40前後らしいので、もうちょっと年上の人の方が

良さそう。松雪さんとか(上過ぎ?)。クールビューティっていうと、冨永愛さん

とかも良さそう(モデルだけど最近女優もやってらっしゃるし)。

ドラマも観てみたかったな~。

このシリーズは、本当に本格ミステリの面白さが凝縮されていると思う。

第三弾もぜひお願いしたいです。