ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

友井羊「放課後レシピで謎解きを うつむきがちな探偵と駆け抜ける少女の秘密」(集英社文庫)

お料理にまつわる青春ミステリー第二弾。前作から結構時間が経っているので、

内容はあまり覚えていなかったのだけれど、主要な登場人物もほとんど変わって

いるので、単独でも十分楽しめました(二人いる主人公のうち一人は前作に出て

来た人物ですが)。

勝気で直情型の夏希は、理由あって陸上部を辞めて、調理部に転部することに

した。同じ時期に入部してきた結とはほとんど話したことがなかったが、ある日、

部活でパンを焼くことになり、同じ班になった。しかし、夏希と結たちの班が作った

パンだけ、なぜか発酵せず膨らまなかった。夏希は、結と共に原因を究明しようと

調査を開始するのだが――。

始めはトラブルメーカーで勝気な夏希の性格に馴染めず、内気な結への態度にも

イラッとさせられたりして、いまひとつ物語に入っていけないところがあったの

ですが、一話進むごとに二人の仲が深まって行き、かつ夏希の抱えるある事情を

知ってから、加速度的に作品にのめり込んで行きました。単純に爽やかでほろ苦い

青春ミステリというだけでなく、社会的な問題も背景に盛り込まれていて、深みの

ある作品に仕上がっていると思います。何より、正反対の性格の夏希と結が、

お料理にまつわる謎を通して、少しづつ友情を育んで行く過程が非常に細やかな

心情を混じえて描かれていて、ラスト一篇では予想以上に二人の友情に感動して

しまった。内向的で他人と付き合うことに恐怖を覚える結が、夏希の為に起こした

行動に拍手を送りたくなりました。しかも、二人に関わった多くの人をも巻き込んで。

でも、その人たちもみんな、嫌々ではなく、純粋に夏希と結の為に力になりたいと

思って協力してくれている。ああ、青春って、友情っていいなぁって、本当に

心から思える作品でした。それぞれの事情があって友達がいなかった夏希と結

だったけど、お料理をきっかけにかけがえのない、一生の友達が出来たと思う。

同じ調理部の後輩・杉野くんや、夏希と陸上部時代に親しかった玉置くん、

写真部の草村さんに調理部顧問の横田先生などなど、脇役キャラも良かったですね。

特に杉野くんは、ある障害を抱えていることで深刻な悩みを抱えながらも、

夏希と結のことを慕って、明るく接してくれるところが好感度高かったです。

肝心のお料理に関する謎解き部分も、知らない知識がたくさん出て来て、

目からウロコな真相が多かったです。お料理って、本当に化学なんですねぇ。

いろんな食材の知識を持っている結はすごいと思いました。謎を解く為に独自で

調べ上げる調査能力も大したものです。内気で消極的な性格だけど、謎解き

に関しては立派な名探偵であり、頼もしかったです。

二人の凸凹コンビの関係がとても良かったですね。青春ミステリーがお好きな方

にはぜひオススメしたい一作です。