ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

東川篤哉「スクイッド荘の殺人」(光文社)

なんとなんと、シリーズ13年ぶりの新刊だそうです。そういえば全然出てなかった

ですよね。東川作品の新刊読む度に、あー、次は烏賊川市シリーズがいいな~とか

言っていたような。今回、満を持しての最新長編。

ファン待望の新刊ということで、サービス精神たっぷりの内容となっております。

烏賊川市だけに、烏賊尽くし(笑)。何せ、今回舞台となる場所も、スクイッド荘

なるホテル。スクイッドって何だろ?って恥ずかしながら、鵜飼や流平同様知らな

かったのですが(汗)、烏賊のことだそうで。つまり、烏賊荘ってことですね!(笑)

本の表紙のイラスト見てもらうとわかりやすいと思うのですが、上空から俯瞰すると

烏賊の形に見えるデザインのホテルです。もちろん、出て来るお料理も烏賊尽くし!

どんだけ烏賊好きなのよ!(笑)

今回、鵜飼と流平の探偵&助手コンビは、このスクイッド荘でクリスマスを過ごす

小峰興業の社長・小峰三郎のボディガードの依頼を受ることに。小峰宛てに、

クリスマスカードに模した脅迫状が届いていたからだ。ホテルでの宿泊代も食事代

も支給されると聞いて、一も二もなく引き受けた二人だったが、宿泊日の当日、

スクイッド荘の周囲は大雪に見舞われ、陸の孤島状態に。なんとかホテルに辿り

着こうとしていたところ、目の前で事故車を発見。どうやら、雪でカーブを曲がり

切れずに林に突っ込んでしまったらしい。運転席には若い男が乗っていて、意識を

失っている様子。鵜飼たちは、急病人を連れて取り敢えずスクイッド荘で救護

することに。しかし、応急処置を受けて寝室で休ませていた筈のこの男が、その後

部屋から忽然と姿を消してしまう。鵜飼は、この旨を旧知の仲である砂川警部に

報告。すると、砂川は、車内で見つかった免許証から男の名前が『黒江健人』

という人物だと鵜飼から知らされ、その上現場がゲソ岬のスクイッド荘であること

から、20年前に担当したバラバラ殺人事件のことを思い出す。そこで、砂川は、

当時コンビを組んでいた、引退した先輩刑事を訪ねることに――。

スクイッド荘にいる鵜飼や流平たちの視点と、20年前のバラバラ殺人事件を

追う砂川警部たちの視点、ふたつが交互に描かれます。相変わらずのゆるーーい、

空気感に脱力しつつ、展開もかなりスローテンポなので、まぁ、ページが進まない、

進まない(笑)。いや、面白いんですよ!?面白いけど、なんか、読んでるとなぜか

速攻で眠気が・・・(笑)。過去の事件はバラバラ殺人事件だし、現在の事件は

雪に閉ざされたクローズドサークル内で起きているし、結構緊迫している筈なのに、

やたらにだれて弛緩しきった空気感に、読む方も気が抜けてしまいがちだったのかも

・・・。400ページ弱の本ですが、読み終わるのに一週間くらいはかかっていた

ような^^;

終盤の謎解きも、いつもよりは意外性とかキレが足りなかったように感じたなぁ。

ある人物の名前に関するトリック(?)には驚かされましたけど。そんな

偶然あるか!?とツッコんでいたのだけど、ラストの怒涛のエピローグ攻撃の

中で、その偶然が必然だったことを知り、溜飲が下がりました。なるほど、あの

二人の友情から生まれたものだったんだな~と、そこはちょっと微笑ましい

気持ちになりましたね。

小峰三郎殺害の犯人の動機に関しては、完全に逆恨みにしか思えなかったなぁ。

まぁ、悪いことをした人に制裁が下ったとも云えるけど、殺人を犯すほどの

恨みを持つとは思えなかった。親族が殺されたとかなら納得出来たかもしれません

けど、そこまでされた訳じゃなかったしね。ちょっとそこは腑に落ちない気持ちに

なりました。

まぁ、でも、久しぶりに大好きなシリーズが読めて嬉しかったです。細かいギャグ

満載で、ニヤニヤしながら読めました。

ひとつ残念だったのは、朱美さんが一瞬しか登場しなかったところかな。せっかく、

シリーズ20周年記念作品だったのに。あれだけ怒涛のエピローグ攻撃するくらい

なら、最後にちらっと朱美さんも登場させてほしかったな~。