ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

山本幸久「花屋さんが言うことには」(ポプラ社)

久しぶりに山本さんの作品を読みました。これは、王様のブランチで紹介されていて、

とても面白そうだったので予約してあった作品。お花屋さんが舞台のハートフルな

お仕事小説ということで、私の好みど真ん中だったもので。

小学生の頃、一番最初になりたかった将来の職業が、お花屋さんでした(高学年の

時には漫画家になりましたがw)。子供の頃から憧れ続けていたお花屋さん。

高校だか大学の時に、年末の短期間だけアルバイトはしたことがあります。スーパーの

入り口にあったお花屋さんで、真冬だったのでめちゃくちゃ寒くて辛かった思い出

があります(笑)。でも、お仕事内容はとっても楽しかったんですよね~。短期

だったから楽しいだけで終われたのかもしれませんが(苦笑)。

実際の花屋のお仕事って、きっとすごく大変だと思います。手は荒れるし、重労働

だし、立ちっぱなしだし。小説の中で、店主が主人公のことを『花屋に憧れて

ないところがいい』と言っていたのが印象的でした。変に花屋さんに憧れを抱いて

働き始めると、思っていたのと違う!とすぐ辞めてしまう子が多いのだとか。

なんかわかるなぁ。本屋さんも似たようなところありますよね。理想と現実は

違う、みたいなね。働いてみると、意外と大変さがわかる。って、どんな職業だって

それは一緒だと思うけれども。

主人公の君名紀久子は、勤めていたブラック企業に辞表を提出したところ、上司から

深夜のファミレスに呼び出された。上司から侮辱的な言葉で責められ、引き止め

られた上、セクハラまがいの言葉まで吐かれて、身も心も疲れ切ってしまう。

そんな紀久子の前に現れたのが、花屋を営む外島季多だった。パワハラ上司から

救ってくれた季多と意気投合した紀久子は、その後二人で飲み明かし、酔った

勢いで季多の花屋でアルバイトすることに合意してしまう。翌日、履歴書を持って

季多のお店を訪れると、その日から働いて欲しいと頼まれて――。

個性豊かな従業員と、様々な理由でお花を求めてやってくる客たちとの悲喜こもごも。

基本的には適当な性格だけど、いろんな花に少しでも多くの人に触れて欲しいと

あれこれと手を尽そうとする店主の季多のキャラがいいですね。一年の中で、花に

焦点が当たる日ってそんなにないと思っていたけど、知らないだけでたくさん

あるものなんですね~。ミモザの日ってのはなんとなく聞いたことがあったけど、

重陽節句(菊の節句)とか、スズランの日とか知らなかったな~。

パートの光代さんが選ぶ、その日のオススメのお花に纏わる俳句や詩や短歌も

素敵でした。

一話ごとにテーマのお花があって、それに纏わるお話になっています。最後に、

そのお花の花言葉も出て来ます。お花は、同じ花でも色や本数によって花言葉

変わったりするから、覚えるのも大変でしょうね。しかし、お花をもらって、

いちいち花言葉とか調べる人ってそんなにいるのかな~と思ったりはする。

贈る方も、いちいちこの花言葉だからこの花を贈ろう、と思う人って、そんなに

いない気がするんだけど、どうなんだろう。花束だったらいろんな花入って

たりもするしねぇ。でも、お花をもらって嬉しくない人って、そうはいないと

思うんだよね。中にはアレルギーとかあって花が苦手な人もいるだろうけどさ。

それは少数派だろうから、お花屋さんって、本当にたくさんの人を幸せにして

くれる職業だなって思う。私がお花大好きだから、特にそう思うのかもしれない

ですけども。とはいえ、人にお花を贈ったことって、数えるくらいしかないの

だけども^^;

今は、お庭のバラをブーケにして人にあげる方が多いかな。あげた人は100%

喜んでくれてるから、ありがた迷惑ってことはない・・・ハズ・・・^^;

昨日も、夫が義実家に行く用事があるということなので、ちょうどバラの二番花が

たくさん咲いていたので摘み取ってブーケを作って持って行ってもらったら、

喜ばれたと言っていましたしね(私は仕事で一緒には行けなかった)。

脇役キャラもみんないい人ばかりで、悪い人が全く出て来ないので、安心して

読めました。お花屋さんあるあるネタも楽しいし、花ウンチクも勉強になりました。

紀久ちゃんの仄かな恋にはちょっぴりドキドキ。カレー作りの名手で農大の研究助手

の芳賀君のキャラも好きだったな。彼の秘密にはびっくりしたけど。彼とお店を

頻繁に訪れる小学生の蘭君との掛け合いがとても好きでした。

そういえば、作中に出て来る『満点星』の読み方の正解が結局最後まで書かれて

いなかったので、ネットで調べてしまいました。ああ、このお花かぁ!って

思いました。よく、植え込みに植わってますよね~。完全に『まんてんぼし』

だと思っていたなぁ(グリル満天星の影響かw)。『マンテンセイ』という

読み方もあるらしいけど、ここに出て来る正解は花の名前の方ですもんね。他の

漢字しか知らなかったけど、こういう表記の仕方もあるんですね。知らなかった~。

お花大好きな私にとっては、とっても読んでいて楽しかったです。終盤の方は、

読み終えるのが寂しくなったくらい。紀久子のグラフィックデザイナーとしての

仕事が少しづつ広がって行くところも良かったです。是非、今後はお花屋さんと

両立して欲しいなぁ。

続編書いて欲しいな~。もっともっとお花の世界を知りたいです。