心霊探偵八雲シリーズ外伝。講談社文庫で出るって、かなり珍しいのでは?スピン
オフ的な作品だからかな。一応文庫書き下ろし作品らしい。
八雲が高校生の時に出会った、共感覚を持つ同級生の琢海が語り手となっています。
サウンドカラー共感覚という特殊な能力を持つ琢海は、交通事故で両親を失い、自身
も腕を骨折した時に病院で出会った、青い声の少女のことが忘れられなかった。
一年後、高校に入学した琢海は、偶然その青い声の少女と再会する。少女は美術部
の三年生だという。明るい彼女との再会に喜ぶ琢海だったが、ある日早朝の美術室で
顧問の先生が死体となって発見される。発見したのは琢海だった。しかも、琢海は、
死体を発見する直前に、青い声の先輩の姿を目にしていた。殺したのは彼女なのか
――。
なかなかの読み応えでしたねぇ。ちょっと中だるみした感もありましたけど。
先生殺害の犯人は、半分は予想通りだったけど、半分は盲点をつかれたって感じ
でした。琢海が結構優柔不断というか、ぐるぐる考えるタイプなので、ちょっと
イラッとさせられたところもありましたね。
事件の方は解決したけれど、妹のいじめ問題の方は何も解決しないままだったのが
ちょっともやもやしました。結局、逃げるみたいに転校することになってしまったし。
良かったところは、やっぱりラストの琢海と八雲の再会シーンかな。琢海とあの子
が一緒にいたのも嬉しかったし、八雲に歩み寄ろうとした琢海の行動も嬉しかった。
やっと八雲にも本当の意味で同年代の友達が出来たと云えるのかなぁ。この再会の
後も交流が続くと良いのだけれど。
共感覚を題材にした作品はいくつか読んだことがありますけれど、サウンドカラー
共感覚というものもあるのですね。こういう能力のものは読んだことがあったかな??
初めてのような。声が色で見えるなんて、面白いですね。まぁ、琢海にしてみれば
面白いなんてものじゃないんだろうけど。オーラが見える人みたいな感じなのかな?
私の声はどんな色に見えるんだろう~。琢海に見てもらってみたい。でも、嘘が
混じるとすぐにわかってしまうのはちょっと怖いかも。それで、琢海自身も辛い
思いもして来たんだろうな。時間はかかったけど、八雲という理解者が出来たことは
琢海にとっても心の支えになるんじゃないのかな。二人が普通の友達同士みたいに
付き合える日が来るといいなぁと思いました。