ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

大崎梢「ドアを開けたら」/七月隆文「ケーキ王子の名推理3」

こんばんは。先日、とてもショックなニュースが飛び込んで来ました。
それは、漫画家あさぎり夕さんの訃報。小学生時代、なかよしを毎月楽しみに
購読していて、中でもあさぎり先生の作品はザ・少女漫画!って感じで大好きでした。
普通の女の子がやたらとイケメンにもてまくるお話が多かったなー。
コミックスもほとんど買っていたんじゃないかなぁ。最近はBLものとかに宗旨変え(?)
したらしいので全然読んでなかったですが・・・それでも、やっぱり大好きだった
漫画家さんの訃報は思った以上にショックでした。まだ六十歳を少し過ぎたくらい
だったそうで、早すぎです・・・。ご冥福をお祈りいたします。


今回も二冊ご紹介。明日から四国旅行に行くので、ちょっと手短に。


大崎梢「ドアを開けたら」(祥伝社
大崎さんの最新長編。
帯の文言『知人を訪ねただけなのに・・・最悪の五日間の幕が開く!』を読んで(私の
図書館では、多くの本が帯の一部を切り取って冒頭のページに貼り付けてくれている
んです)、気が滅入るようなイヤミスっぽいお話を想像していたのですが、ちょっと
想像とは違う展開でした。確かに最初はそれに近い感じで始まったのですが。
主人公の鶴川佑作は、理由あって無職の54歳独身、横須賀のマンションに一人暮らし。
ある日、仲の良い同じ階の年の離れた友人、串本を訪ねた所、インターフォンを押しても
反応がなく、ドアを押してみたところ鍵もかかっていない。心配になり部屋に上がってみると、
串本が亡くなっているところを発見する。ある理由から遺体の発見を翌日まで伏せて
おきたい佑作は、通報せずに部屋を出る。しかし、その場面を同じマンションの高校生
の少年に目撃されて写真を撮られてしまい、脅迫めいた『お願い』をされる羽目に。
友人の死を通報しなかったことで自責の念にかられた佑作は、通報することを決め、
翌日再び串本の部屋を訪れる。しかし、なぜかその場から死体が消えていた――。
佑作が高校生の紘人に脅された辺りで、イヤミスっぽくなっていくんだろうな、と
身構えていたのですが、紘人が意外と祖母思いのイイヤツで、その後、二人で協力
して串本の死を追って行く展開になったのは意外でした。最後は二人の年齢を超えた
友情にジーンとしちゃいましたし。佑作って、串本にしても紘人にしても、年齢で
壁を作ったりせずに友情関係になれるところがいいですね。
串本の死自体はちょっと拍子抜けするところもありましたが、彼のいくつもの不審な
行動の謎が解けて、その背景にある真実を知って、胸が苦しくなりました。年齢や性格に
不釣合いな自撮り棒があった理由なんかも、うまく伏線として機能していますね。
ミステリとしてもよく出来ていると思います。
やっぱり、一番良かった所は、一緒に行動していたことで、佑作と紘人がいい友達に
なれたところですね。
年は離れているけど、お互いに孤独な二人が、お互いを心の拠り所に出来るように
なれたところが嬉しかったです。距離は離れてしまうけど、スマホで連絡は
取り合えるし、きっとまた再会出来ますよね。そうであってほしいな、と思いました。


七月隆文「ケーキ王子の名推理3」(新潮文庫nex
シリーズ第三弾。今回も少女漫画みたいな王道の展開で、イケメンスイーツ王子・颯人
にイケメン貴公子の強敵が登場。パティシエとしての敵でもあるし、未羽を巡る恋の
敵でもあるし。あまりに王道すぎて、こっちがこっ恥ずかしくなるくらいでした(笑)。
颯人は、漣の登場でついに未羽への気持ちに気づきましたね。後ろを向いて真っ赤に
なっている颯人に萌えました・・・!!(おばちゃん目線)
しかし、未羽はニブ過ぎますねぇ。あれだけあからさまな態度取られたら、いくら
何でも気づきそうなものですけど。そこが彼女のいいところなのかもしれないですが。
颯人ファンの未羽の家族もいい味出してますね。まぁ、モデルのようなイケメン男子が
家にやってきたら、私も同じような態度になっちゃうかも・・・(笑)。
出て来るスイーツは今回も美味しそうだった。お菓子作り初心者の未羽や悠希が、
シフォンケーキに挑戦するところに感心しました。シフォンケーキって、材料は
シンプルだけど、キレイに膨らませるのはかなり難しいと聞いたことがあるので。
まぁ、案の定な失敗でしたけど。でも、颯人にアドバイスを聞いて安い卵に変えろ
と言われたのに、悠希が持って来た高級卵に拘ったところは頑固だな、と呆れつつも
友達想いでいい子だな、と好ましかったです。
ガレット・デ・ロワに入っているフェーブという小さな陶器の人形、私も
フランスで引き当てたことがあります。たまたまパン屋さんで買ったガレットの
一切れに運良く入っていたんですよね~。マリア様の形をしていて、とても
かわいいのです。今でも部屋に飾ってたまに拝んだりしてます(全然キリスト教
じゃないけど^^;)。
アントワープの手っていうお菓子は初めて知りました。実物見ると、ちょっと
シュールそうだけど・・・。颯人の施した仕掛けにはビックリ。実現出来るものなのかな、
これ。ああいうコンクールでやるには、成功するかはかなり賭けだったんじゃない
のかなぁ。失敗したら台無しになりそう^^;まぁ、うまくいって良かったです。
次回は未羽と颯人と漣の三角関係がもっと発展しそうですね。
次も楽しみです。