ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

相沢沙呼「invertⅡ 覗き窓の死角」(講談社)

城塚翡翠シリーズ第三弾。invertシリーズ第二弾とも言うのかな?二作収録されて

いまして、どちらも倒叙ミステリ。まぁ、一作目は少しひねってあるので、厳密に

倒叙ミステリって言っていいのか微妙なところではありますが。

ドラマ化スタートに合わせて新作が出たのでしょうね。ドラマはなかなか配役が

良さそうなので、とても楽しみ。最近あまり観たいドラマがなかったから、久しぶり

に毎週観たいと思える連続ドラマになりそう。真ちゃんの配役がちょっと微妙な気も

しますが・・・(小芝風花ちゃんは大好きな女優さんだけど、宝塚の男役みたいな

ビジュアルをイメージしている真ちゃんとは全然イメージが合わない・・・)。

清原果耶ちゃんの翡翠ちゃんはなかなかハマっていて良い感じですけど。どんな

ぶりっ子翡翠になるのかしらん(わくわく)。

おっと脱線しました。失礼しました。

では、一作づつの感想を。

『生者の言伝』

友人の別荘に忍び込んで、あるミッションを遂行しようとした僕。しかし、うっかり

うたた寝をしてしまったが為に、友人の母親が戻って来たことに気づかず、彼女と

遭遇してしまった。そして、気が付いた時には、僕の手には血に塗れた包丁があり、

目の前に友人の母親の死体が横たわっていた。後悔ばかりで絶望に突き落とされた

僕だったが、そんな緊迫した状況の中、突然インターフォンが鳴り響いた。モニター

を見ると、なぜか若い女性の二人組が――。

主人公の蒼汰をあの手この手で篭絡しようとする翡翠のぶりっ子キャラが、相変わらず

演技だとわかっているとはいえ、やっぱり絶妙に鬱陶しかったですね(苦笑)。

それに翻弄される蒼汰が可哀想になりました。基本とても素直で良い子なので、彼が

はずみとはいえ殺人を犯してしまったことが残念でなりませんでした。翡翠の度重

なる揺さぶりにもめげずに、なんとかその場で言い逃れて乗り切ろうと四苦八苦

するところに、ついつい応援してあげたくなってしまいました。ただ、殺人を

行った直後にしては、翡翠や真にドギマギしたりして、いまいち緊迫感に欠ける

ところがあったので、そこはどうなのよ、と思ったりもしてましたけど。まぁ、

そういう部分も含めて、すべてラストへの伏線だったのですけどね。相変わらず、

伏線の張り方が絶妙だなぁ。蒼汰が友人の山荘に来て本来やりたかったことに

関しては、実はラストまで気づいてなかったんですよね。途中何度も彼の身の上が

出て来て、伏線は出て来ていたというのに!なぜそれに気づかなかったのか、自分。

この閉ざされた山荘の中で、翡翠たちと出会えた蒼汰は、実はとても幸運だったと

いうことですね。本当に、翡翠が彼の現状に気づいてあげられて良かった。しかし、

友人の別荘(の中でやろうと思っていたのではないでしょうけど)に来て、○○

しようとしていたってのは、さすがにちょっと迷惑じゃないかな・・・。遂行しなくて

本当に良かったですよ。

 

『覗き窓の死角』

写真家の江刺詢子は、いじめを苦にして自殺した妹の復讐をする為、モデルの藤島

花音を呼び出した。巧妙なアリバイトリックを使って、完全犯罪を目論み、一見

それは成功したかに思えた。しかし、アリバイを証明してくれる筈だった友人の

城塚翡翠によって、その目論見は少しづつ瓦解されて行く――。

ミステリを語り合える友達が出来たと真に嬉しそうに報告していた翡翠が、その

友人の犯罪を暴かねばならなくなったことが悲しかったです。殺人という犯罪を

許せない自分と、初めて出来た友達を失いたくないという思いとの葛藤で、

揺れ動く翡翠の心の動きが切なかったです。それでも、やっぱり翡翠の正義感が

打ち勝った。普段はふわふわしていてドジっ子な面ばかりが見える翡翠ですが、

いざ推理の段になると、途端に冷静で明朗な頭脳を開帳し始めるのだから、その

ギャップに萌えずにいられません・・・。怜悧な頭脳で詢子を追い詰めて行く

ところは、さすがでしたね。こちらの作品に関しては、そんなにど派手などんでん

返しがある訳ではないのだけれど、細かい伏線が終盤に向けてきれいに回収されて

行くところはお見事でした。どんでん返しを期待している読者にはちょっと

物足りなさもあるかもしれないですけど。この作品に関しては、特筆すべきは

真の存在です。終盤の活躍には目を見張るものがありました。翡翠を傷つけた

詢子への静かな怒りを感じて、ゾクゾクしました。かっこいい・・・!!!真

ちゃんは、なんだかんだいって、翡翠のことが可愛くて仕方ないんじゃないかなぁ。

翡翠は友達がいないと自分を卑下するけれど、真のような存在がすぐ近くにいる

のだから、どんな友達よりも恵まれていると思うけどな。しかし、真ちゃんって

探偵だったのね。って、そんな設定前に出て来てましたっけ??探偵が探偵の助手

やってたのか・・・。そりゃ、優秀な訳だね。真ちゃんといる時の翡翠は、素の

顔が伺えて、とても可愛い。二人の会話のシーンが大好きです。

今回もとても楽しめました。表紙は、詢子があの時に撮った写真の翡翠ですね。

この涙には、きっと彼女のいろんな葛藤が現れていたのだろうな、と思えました。

 

追記。

本書の下書きを考えたのはドラマの一回目放映の前でした。その後、一回目が

放映されて、視聴しました。

なかなか、全体的に原作に沿って作ってあったのではないかな?細かい設定は

すっかり忘れちゃってるんで、違うところもたくさんあるのでしょうけれど。

清原果耶ちゃんは翡翠にぴったりな感じしましたね。まだ表向きの顔の部分

しか出て来てないから、今後真ちゃんとのシーンが楽しみだったり。まぁ、

それも終盤にならないと本当の素の部分は出てこないでしょうけど・・・。

今後の展開が楽しみですね。