ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

倉知淳「月下美人を待つ庭で 猫丸先輩の妄言」(東京創元社)

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久しぶりの猫丸先輩シリーズ!読むのを楽しみにしてました。相変わらず人を食った

面倒くさい性格してますねぇ(笑)。でも、そこが猫丸先輩の良い所でもあり。

基本的には誰に対しても傍若無人な態度なんですけど、後輩の八木沢に対する

言動だけは、さすがに振り回され過ぎて気の毒になってしまうレベル。素直で

騙されそうな善人を見ると、おちょくらずにはいられないんでしょうねぇ・・・。

いい性格だな(苦笑)。でも、小さな物事も見過ごさない、鋭い推理力も相変わらず。

今回はタイトルに『妄言』とついているように、あくまでも『想像』の範囲での

推理、というレベルのものが多かったですが。それでも、その妄言が真実なのでは

と思えてしまうところが、猫丸先輩のすごいところなのかも。そんなバカな、

と思えるものもありましたけれどね。

では、各作品の感想を。

 

『ねこちゃんパズル』

十匹づつの黒と白の猫を、目隠しをして別々の檻に入れるにはどうすればいいのか、

というパズルの答えには、脱力。それだけの下準備をしたとしても、それは巧く

行くものなのか・・・??猫飼ったことないから、いまいちピンと来ないところも

あったのですけど。八木沢が見つけたメモと謎の外国人に関する猫丸先輩の推理

には唖然としましたけど、案の定なオチもついて、ずっこけました。猫丸先輩に

翻弄されまくる八木沢が気の毒になりました^^;

 

『恐怖の一枚』

単なる中年男の写真から、あそこまで推理が広がるとは思いませんでした。腑に落ち

ない部分もないとは言わないけど。写真をひと目見ただけであそこまで読み取って

しまう猫丸先輩はやっぱりすごいなぁ。まぁ、真実はわからないままですけど。

3と8の数字が似ているという、始めの方で出て来た領収書に纏わる伏線が、ああいう

風に効いて来るとは。なんらかの伏線なんだろうなぁとは思っていましたけどもね。

 

『ついているきみへ』

友人からもらった謎のプレゼントの中身は、新聞にくるまれたペットボトルの蓋。

一緒に入っていたメモに書かれていたのは『For Lucky Man』。一体どういう意味

なのか――。これは、猫丸先輩の推理に『なるほどー!』と思いました。なんとも

まわりくどいやり方ではありますけど。友人の几帳面な性格とか、なんでもメモる

ところだとか、伏線がすべてちゃんと意味をなしていて脱帽。彩音さんの犬が

スーパーから消えた謎に関しても、言われてみればと納得出来るものでした。

これは、猫丸先輩の推理が妄言ではなさそうな一件ですよね。

 

『海の勇者』

嵐の中、海へ向かって歩いて行った足跡の謎とは?猫丸先輩の推理にあたふた

するバイトリーダーの姿は、八木沢と重なりました。でも、八木沢の方がずっと

好感持てますけど。足跡の真相には拍子抜け。これは推理ではないですよね。

単に、猫丸先輩におちょくられた男の話って感じでしたね。それにしても、この

海の家で出される料理、酷すぎる。こんな海の家には絶対行きたくないって思い

ました。

 

月下美人を待つ庭で』

母親を亡くし、自宅で一人、母親が育てた月下美人の開花を待つ男の話。庭に

三日続けて不審者が現れた理由は、納得出来るような出来ないような。民家を

そういう場所だと勘違いするものなのかなぁ。よっぽど整えられたきれいな庭

なんでしょうけど。月下美人が咲く様子は私も一度でいいから生で見てみたい

なぁ。ブロ友さんのお母様が育ててらして、開花した写真をアップされてて、

それは見事なものでした。素人が育てられる花だとは思わなかったです。

ラストがほっこりしてて良かったな。主人公と猫丸先輩が庭のベンチに並んで、

月下美人の開花を見ている様子が浮かんで、微笑ましい気持ちになりました。

 

わがままでしなやかな猫みたいな、猫丸先輩。ふてぶてしさや人を食った傍若無人

性格なのに、なぜか憎めない。なんだかんだいって、お人好しだし。

やっぱり猫丸先輩シリーズはいいなぁ。堪能いたしました。