東川さん最新作。タイトルといい出版社といい、『館島』と雰囲気似てるなー、
もしや続編!?と思いながら読み始めましたらば、当たらずと言えど遠からず、
微妙に繋がっている作品でした。とはいえ、単独作品と云ってもほぼ間違いでは
ないです。一部『館島』に出て来る登場人物との血縁関係がある人物が出て来る
くらいで(電話での本人登場シーンも多少ありますが)。そもそも、『館島』の
登場人物なんてすっかり忘れていたので、そんな人出てたんだっけ?状態でした
けどね^^;ただ、あの作品は、トリックだけは未だに鮮明に覚えていて、とても
印象深い作品。館自体が巨大な○○ですからね・・・目が点になりましたよ^^;
本書は、デビュー20周年を記念して刊行された作品だそうで。瀬戸内海の孤島に
建つ奇妙な形の館を舞台に繰り広げられるクローズドサークルミステリです。
孤島ミステリも館ミステリも大好物なので、ワクワクしながら読みました。
東川さんですから、当然ながら微妙な(笑)ユーモアも散りばめられています。
本格ミステリガジェットもてんこ盛り盛り。
まぁ、ツッコミ所も多々ありましたけれどね。んなバカな、みたいなね。
美少女が目撃した赤鬼の謎、昼間にはなかった筈の小屋が夜中に出現した謎、
二十年前の人物消失の謎、そして、あちこちが損傷した殺人の謎、いろんな謎が
出て来て頭がこんがらがりそうにもなりましたが、真相を知ると、すべてが
きれいに理論的に解明されて、なるほど~!と思いました。途中に出て来た
何気ないシーンが、後に判明する殺人のトリックの伏線になっていたりして、
驚かされました。あの、ハエが潰されるシーンがねぇ・・・。
館自体の形の意味にもビックリさせられましたけれど。真相を知って、タイトルの
意味もわかりましたね。確かに、いろんな仕掛けが・・・。頂上階の丸い建物
の意味や、へんてこな螺旋階段にもちゃんと意味があって、良く出来ているなぁ
と思いました。まぁ、実現可能かどうか、という意味では、リアリティはないのかも
しれませんけどね・・・。
一番びっくりしたのは、やっぱり中庭のヘリポート『H』の部分かなぁ。どうなって
んの!?と思いましたよ・・・。こういう真相は、映像で観た方がよりわかり
やすいでしょうね。もちろん、文章でも十分伝わってはきましたけれども。面白い
アイデアだなぁと思いました。さすが東川さんって感じ。前回に続き、巨大な○○
がポイントでしたね~。今回のもインパクトは絶大。細かい部分は忘れても、
このメイントリックは忘れないだろうなぁ。
探偵の小早川隆生と、ワトソン役(?)である弁護士の沙耶香のコンビも良かった
ですね。
全然二人の会話は噛み合ってなかったですけど(笑)。『館島』の時は探偵役と
ワトソン役に恋が芽生えたみたいですが、こちらは全くその素振りもありません
でしたね^^;
作家生活20周年記念に相応しい一作だったのではないでしょうか。ということは、
デビュー作から追いかけている身としては、ファンになって20年位経つんですねぇ。
早いものだ(感慨深)。
東川さんの本格ミステリ魂を感じる作品で、堪能させて頂きました。