ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

米澤穂信「栞と嘘の季節」(集英社)

とても気に入っていた『本と鍵の季節』の図書委員コンビが帰って来ました。続編

書いて欲しいと思っていたから、読めて嬉しい。とはいえ、前作が出てから三年

が経っているので、細かい設定とかすっかり忘れちゃってて。主役の二人のことは

さすがに覚えてましたけど。後輩の植田君とか、全然覚えてなかったです^^;

今回結構重要な役回りなんですけどね・・・。彼のお兄さんが出て来たことは

記憶の片隅に残っていたけれど。自分の一作目の記事読んで、なんとなく思い出し

ましたけども。年々、記憶力が低下の一途を辿っている・・・。まぁ、そもそも、

こうして読書ブログをやっているのも、読んだ本を忘れない為にと始めたこと

なのだけれど。記事を残したところで、結局ほとんど思い出せないっていうね。

困ったものです・・・。

主役の二人、次郎と詩門のつかず離れずの微妙な友情関係が今回も良かったです。

詩門のプライベートに敢えて踏み込まないように距離を取っている次郎の淡々と

した性格は、冷たいようで、とても優しく高校生とは思えないくらい人間が出来て

いるように思う。人間、誰だって踏み込まれたくない領域はあるものですから。

そういう配慮が出来るって時点で、十代とは思えないくらい達観してますよね。

詩門は詩門で、とても高校生とは思えないくらい老獪な思考力を持っているし。

この二人の会話読んでいると、とても高校生とは思えないです。私が二人の

相手したら、理解力がなさすぎてめっちゃ呆れられそう・・・会話したくない^^;

今回は、高校生とは思えない新キャラがもう一人出て来ます。女優のように美しい、

二人と同学年の瀬野さん。最初はとっつきにくい人かと思いましたが、二人と

ある目的の為に行動を共にするようになってからは、少しづつ印象も変わって

行きました。あんな栞を世に送り出したことで、罪深いところもあるとは思いますが

・・・。

そう、今回は、危険な栞を巡る物語。ある花の押し花で作られた栞を見つけた

次郎と詩門は、それが邪まな意図で作られたものではないかと危惧し、持ち主を

捜すことに。すると、写真部の生徒が写真のコンテストで賞を撮った写真に写る

女子生徒が、その花を持っていることに気づく。そこで、写真を撮った本人に

撮った場所を聞くと、校舎の裏だと言う。二人が校舎裏に行ってみると、そこで

一人の女子生徒がうずくまって何かをしているところに行き合った。女子生徒の名前は

瀬野で、校内でも有名な女子だった。詩門とは顔見知りのようだったが、二人の

態度はどこかぎこちなかった。瀬野が行ってしまった後、二人で彼女がうずくまって

いた場所を調べてみると、そこには例の花の塊根が埋まっていた。そして、後日、

生徒にパワハラをしていると噂の教師が救急搬送される事態に――。

ちょいちょい、腑に落ちないものを感じるお話ではありました。女子中学生が

『切り札』にするのに、こういうものを選ぶってところもだし、写真のコンテスト

で女子生徒がこんな花を持っている写真を入賞させるか、というところもだし、

そもそも、被写体に素手で持ってもらって大丈夫な花なのかって時点でも疑問を

覚えたし(記事を書くにあたって、ウィキペディアでこの花のことを調べて

みたら、摘んだくらいで死ぬことはないが、傷のない皮膚や粘膜でも中毒を起こす

可能性はあり、素手では触らない方が良いみたいなことが書いてあった)。

栞を広めた人物の動機に関しても、ちょっと理解できかねるものがありました。

この人物に関しても、年齢にはそぐわない言動するなぁって思いましたし、身勝手

すぎるその言動には空恐ろしいものを感じました。米澤さんの青春ミステリは

とても好きなのだけれど、どうにも年齢とその言動にギャップを感じてしまうの

ですよね・・・。まぁ、そこが米澤ミステリの良いところとも云えるのですけれど。

ほろ苦いというよりは、どす黒い青春ミステリって感じでしたね^^;

このシリーズは、前作のように連作短編形式の方が良いような気がするなぁ。

前作のように、合間に次郎と詩門の日常を描いたほっと出来るシーンとかももっと

読みたいです。長編だと、なかなかそういうシーンが出てこないから。どす黒い

だけのお話だと、二人のキャラの相性の良さがあまり見えてこなくて勿体ない。

図書委員としての二人の日常業務とかももっと書いて欲しいな~。

もちろん、面白く読んだのは間違いないです。やっぱりこのシリーズ大好きですし。

今後も続いて欲しいシリーズです。