新進気鋭のミステリ作家二人による豪華な共作ミステリー。タイトルから、読者
への挑戦状が入ったミステリーなんだろうな、と期待しながら読みました。
確かに付属でカードに書かれた『あなたへの挑戦状』が入っていました(二通)。
図書館本ですが、ちゃんと付属品として付帯されていました。ただ、読んだ方には
わかると思いますが、想像していた『あなたへの挑戦状』とはちょっと意味が
違っていました。誰に対する挑戦状なのか、がヒント。これは、ぜひ読んで確かめて
頂きたいですね。
この作品が書かれた経緯も含めて、巻末に収録されている著者のお二人それぞれに
よる執筆日記に詳細が語られているので、なるほど、こういう経緯で書かれたもの
なんだな~と言うのがよくわかって、面白かったです。お互いにお互いのことを
尊敬し合っている関係なのがわかって、微笑ましかったですね。
阿津川さんの作品は多分初めて読むのではないかな(アンソロジーとかで短編
くらいはもしかしたら読んでるかもですが)。最近話題になっている作家さんだと
いうことはもちろん知っていましたが、新刊読みたくても予約が多かったり、
予約しようと思ったらシリーズものだったりとか、なんとなく読み逃して今に
至ってる感じです。
阿津川さんの作品が『水槽城の殺人』。巨大な水槽のある奇抜な屋敷で起きる
不可解な殺人の謎を刑事二人が捜査するもの。水槽城の見取り図は冒頭に出て来る
のですが、いまいち説明描写がわかりにくくて、なんとなく真相を知っても
すっきり~って感じにはならなかったですね。途中まで水槽なの?プールなの?と
混乱したところもありましたし。もともと水槽のつもりで作られたけれど、現在は
生き物は飼っておらず、プールのように使用している、ということなんでしょうが
(塩素も入っているようだし)。水槽城という設定自体は非常に好みだったの
ですけどね。
斜線堂さんの作品が『ありふれた眠り』。天才的な絵の才能を持った妹が一人暮らし
の兄のもとに突然やって来て、美大受験の間泊まらせて欲しいと言って来た。妹
に対して昔からコンプレックスを持つ兄は、妹の訪問を複雑な想いで受け入れる。
そんな中、兄の勤めるホテルで美大教授が死体となって発見された。犯人は死体の
傍らのベッドで一晩眠り続けたらしいのだが、それはなぜなのか、というお話。
これは、犯人はほぼわかった上で、なぜ犯人は死体の横で一晩眠ったのか?という
ホワイダニット中心のお話。その答えは、拍子抜けするほど単純なものでは
ありましたが、確かに言われてみると納得出来るとも思えました。斜線堂さんの
作品は過去二作くらい読んでいい思い出がないのでどうかなぁと思ったけれど、
作品としてはこっちの方が好きだったかな。登場人物もこちらの方がまだ好感
持てましたし。ラストの兄妹間のやり取りには、やりきれないものがありながらも、
痛快感もありましたし。兄の妹への愛憎入り交じる複雑な感情には途中で辟易
したところもありましたけどね。実は、妹への感情はもっと複雑な思惑も隠されて
いるのかも、とか深読みしていたところもあったのですが、意外とそのまんま
でちょっと拍子抜けだったりもしましたが。
なかなか面白い趣向の共作ミステリーでしたね。もっといろんな作家さんで
読んでみたいかも。