ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

二階堂黎人編/「密室晩餐会」/原書房刊

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二階堂黎人編「密室晩餐会」。

衆人環視の連続殺人 わずか数時間で変わり果てる死体 鍵屋の事件の鍵 断崖の消失…… 
本格ミステリー新世代による「密室」競作!(紹介文抜粋)
寄稿作家:麻生荘太郎 /天祢涼 / 安萬純一/ 大山誠一郎/ 加賀美雅之/ 小島正樹


二階堂さん編の密室ものだけを集めた新作アンソロジー。二階堂さんのまえがきによると、

本格ミステリー(本格推理小説)が大好きだ。
◆ トリックに騙されたり、トリックを見破ったりするのが大好きだ。
◆ 密室殺人や足跡なき殺人、姿が見えない殺人者など、不可能犯罪ものが大好きだ。

というような人のために編まれたアンソロジーだそうです。
・・・まさに、私の為のアンソロジーのようです。私が読まずして誰が読むってやつですよ。
・・・ってまぁ、実は言うほど密室ものが好きって訳でもないし(こら)、トリックに騙されるのは
大好きですが、トリックを見破る頭はないワタクシですが(^^;)、やっぱりこういうアンソロジー
には食いついちゃいますね。といっても、これって第三弾だそうで、第一弾、第二弾は完全に読み
逃しちゃってるんですけども^^;
それに、収録作が新作ばかりっていうのがオイシイですね。まぁ、加賀美氏の作品だけは
ネットでは発表済みの作品らしいですが(紙媒体では初だそうなので)。

密室ものって、もうすでに書かれ尽くした感があって、なかなか今更感心させられる作品には
出会わないんですよね。今回もバラエティに富んだ密室ものが収録されてはいるのですが、
出来にはかなりバラつきがあると言わざるを得ません。個人的な感想としては、やっぱり
古参の作家の作品はそれなりに読ませる本格ミステリとして面白かったものの、新人の作品
は文章的にもミステリ的にもアラや甘さが目についてしまい、イマイチ楽しみ切れなかったように
思います。多分相性の問題もあるんでしょうけどね。それに、個人的に、古典的なこてこての
本格ミステリが何より好きなんで、自然、そういう作品に評価が甘くなっちゃうのかも。

まぁ、でも、こういう本格ミステリに拘ったアンソロジーってのは読んでて非常に楽しいです。
前の二作も読もうかな。



以下、各作品の感想。

大山誠一郎『少年と少女の密室』
個人的には今回のベスト。これは収録作の中では群を抜いて好みの作品でした。語り手の刑事の
ある点に関する『思い込み』を指摘された時は、あっと言わされました。最初はそんな勘違い
あり得るか?と思ったのだけど、一つ一つ検証されると、なるほど、と思えました。細かい伏線
がきっちり真相に効いているところもさすがですね。最近単行本は出されていないようですが、
また『アルファベット・パズラーズ』みたいな、小技の効いた本格ミステリを書いて頂きたい
です。

天祢涼『楢山鍵店、最後の鍵』
メフィスト賞受賞の『キョウカンカク』は読みたいと思いつつ、図書館未入荷で未読のまま
なのですが、そのシリーズの短編にあたるようです。
うーん・・・これはちょっとガッカリな作品だった。美夜のキャラも好きになれなかったし、
作品自体もツッコミ所がかなりあったような・・・。短編だから仕方ないのかもしれませんが、
美夜が持つ共感覚の特殊技能(?)も、作品にほとんど生かされていないし。これだけ読んで、
本編を読んでみたくなるかというと・・・あんまりならなかったなぁ。文章もあんまり・・・。
評判いいみたいだから、気になっていたのにな。んー・・・残念。

小島正樹『密室からの逃亡者』
これは次点かな。最後の最後で犯人がひっくり返されるところが良かった。その前に指摘された
犯人だったらわかりやす過ぎると思ってたんで。トリック自体は使い古されたものではありますが、
最後に突然出て来た青年による、ある指摘になるほど~と思わされました。しかし、海老原浩一
って誰?小島さんの他の作品に出て来るキャラなのかな??(読んでる作品だったら恥^^;)。

安萬純一『峡谷の檻』
苦手な時代物ですが、そんなに読みにくさはなかったです。ただ、密室トリックとしては、うーん・・・
そんな真相?って感じで、ちょっとガッカリ。この時代ならではの方法、なのかもしれませんが。
私はこういうのはあんまり好きじゃないなぁ。
鮎哲賞受賞作の『ボディ・メッセージ』は評判良いみたいなので、読んでみたいと思っているの
ですけれどね。

麻生荘太郎『寒い朝だった』
これもちょっとガッカリだった。出て来るキャラも一切好感持てなかったし。真相も救いが
なくて好きじゃなかったし、ラストのタイトルがわかるくだりも、もうちょっと劇的な書き方が
あったんじゃないかなぁ。失踪の直前にこの言葉を言った意味も結局よくわからなかったし。
文章もあんまり好みじゃなかったです。ミステリ・フロンティアのはなんとなく食指が動かなくて
スルーしちゃってるんだけど、どうなんだろう・・・。

加賀美雅之『ジェフ・マールの追想
これは一番古典的な本格ミステリっぽくて、なかなか好みの作品でした。カーの『夜歩く』の続編、
という体裁だそうですが、元ネタが未読なので、出て来るキャラとかにピンと来なかったのが
ちょっと残念でした。密室のトリックとしては、古典の王道という感じで、あまり新鮮味は
なかったのですが、細かい部分の表記にもしっかり『フェア』が貫かれているところには感心
しました。冒頭に出て来るある人物に関してはすっかり騙されてましたし。ただ、犯人は
わかりやすかったですけどね^^;元ネタの方を読んでみたくなりました。




好きな順番は、大山>小島>加賀美>安萬>天祢>麻生 かなぁ。後半の三つはほとんど横並び。
今回初読の新人三作がどれもあんまり・・・だったのが残念。書き慣れてくるとまた違うのかな。
二階堂さんも一作書いてくれたら良かったのにな。
密室ものの本格ミステリがお好きな方にはお薦めしておきたいですね。