ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

藤崎翔「逆転美人」(双葉文庫)

元お笑い芸人の作家・藤崎さんの最新作。何作か読み逃しているのだけど、これは

図書館の新着図書案内で面白そうだったので予約してみました。帯の煽り文句が

スゴイですね^^;図書館本なので読んだ本には帯がついていなかったのですが。

伝説級のトリック・・・ってのはさすがに煽りすぎな気もしますが、読み終えて、

なるほど、なるほど、なかなかすごいことをやってくれたなぁ、と感心しました。

ただ、似たような仕掛けの作品は以前にも読んだことがあったので、伝説級

っていうのはさすがに言い過ぎじゃないかと思うのだけれど・・・。ただ、帯の

通り、紙媒体の作品じゃなければ成立しないのは間違いない。電子書籍が台頭して

きた今の世の中で、こういう、紙の本でしか味わえない作品を出してくれたって

ところが嬉しいですね。ページをめくったからこそ、味わえるラストの喜び。

とはいえ、何かあるだろうと疑いながら読んだものの、仕掛け自体には全く気づいて

なかったのですけどね・・・これ、気づけた人いるのかなぁ。確かに、ちょいちょい

おかしな表記を覚える表現はありましたけどね。まさか、あんな仕掛けが隠されて

いたとは・・・。作者が一文一文めちゃくちゃ気を使って書いたのは間違いない

ですね。よくもまぁ、こんな面倒なことをやったものです。

 

※以下、ネタバレ気味の内容となっております。少しでも興味があってこの本を

読もうと思っておられる方は、必ず本編を読んでからお読み下さい。

 

 

 

 

 

 

 

まず、並外れた美人であるが為に、幼い頃から不幸な目に遭い続けて来たシングル

マザー・香織(仮名)の人生を綴った手記の全容が語られます。この香織(仮)

の人生がもう、理不尽すぎる人生で、なかなかに読むのがしんどかった。美人

だからといって、なぜここまで酷い目に遭わなければならないのか。せっかく

幸せになりかけたと思ったら、そこに更なる悲劇が襲いかかり・・・と、そんな

ことの連続で。美人だからといって、幸せになれる訳ではないんだなぁと暗澹たる

気持ちで読んでいたのですが・・・その手記の後で判明する真実には唖然とする

ばかりでした。まぁ、香織の手記には何か胡散臭いものを感じてはいたのです

けどね。まさか、あそこまでひっくり返されるとは。手記自体の内容にもですが、

その後でこの手記自体に施された壮大な隠しメッセージには更に驚かされましたね。

重版後の追記の部分にすら、同じ仕掛けが施されているという徹底っぷり。実は、

手記の方は自分で読んで確認はしなかったんですよね。答え合わせがあったので。

でも、追記部分は自分で確認するしかなかったので、全部ちゃんと読みました。

手記の著者の本当に伝えたいことがわかって、溜飲が下がりました。なかなか

辛辣で、だからこそ痛快な気持ちになりましたね。

タイトルの逆転美人って、手記を読んでいる時点では、美人であるからこそ不幸に

なってきた女性の人生が、そこから逆転していくからだと思ってたんですが・・・

そういう意味かーーー!って思いました(笑)。ちゃんと、タイトルにもヒント

が隠されていたってことですかね。

こういう仕掛けの作品は大好きです。香織(仮)の手記部分を読むのはしんど

かったですが、ラストまで読むとその苦労が報われた気持ちになりました。

面白かったです。