ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

平山夢明「俺が公園でペリカンにした話」(光文社)

平山さん最新刊。平山さんの新作は全部が図書館入荷してもらえる訳ではないので、

新着案内で入荷されていることがわかるととても嬉しい。本書はお付き合いの

長いお仲間ブロガーさんたちが絶賛されていて、絶対読みたいと思っていたので、

入荷してくれて良かった。いやー、話には聞いてましたけど、ほんとに分厚かった

ですね。総ページ数579ページ。一編づつは短いけれど、連作形式なので、

読んでも読んでもなかなか終わりが見えて来なかったですね・・・^^;

内容はもう・・・平山ワールド全開!って感じのお話のオンパレードでしたね。

いやー、面白かったけど、読んでいて何度気分悪くなりかけたことか。相変わらず

のエロ・グロ・ナンセンス満載で、よくもまぁ、こんな醜悪な設定を次から次へと

思いつくものだなぁと、感心半分、呆れ半分(笑)。そこがもう、鬼才・平山夢明

の面目躍如ってところなのだとは思いますけれども。

内容は簡単に言うと、ホームレスの『俺』が、ヒッチハイクしながらいろんな町

を渡り歩く中で、奇妙奇天烈な人々と出会い、世にも悍ましい体験をして行く

ロードムービー小説。何度も死にそうな目に遭いながらも、結局逃げおおせちゃう

ところが、主人公の強運っぷりを示しているような気がする。トンデモなく下衆な

経験ばっかりなんだけどね。大金を手に出来そうな時もあるけれど、お金を持つ

のは最小限でいいという、なかなか奇特な考え方なせいで、結局無一文で次の町に

行く羽目になるという。旅の先々で出会う人たちも、みんなへんてこな名前や

性格の人ばっかり。まともな人が全く出てこないってところも平山さんらしいです。

強いて言えば、一番まともなのは主人公の『俺』かもしれない。意外とまともな

倫理観持ってるし、先に述べたように大金ちらつかされても動じないし。大金

もらって殺人犯すくらいなら、人助けした方がいいっていう。子供が死にそうな

目に遭ってたら、自らの危険も顧みずに助けてあげようとするしね。まともまとも。

平山キャラとは思えないくらい、ある意味まともで、それはそれでびっくりだった。

あまりにもお下品お下劣な表現に、途中何度も記憶を失いかけたりもしたの

ですが(笑)、なんだかんだで面白く読んでしまうところはやっぱりすごい。

いや、完全に読者を選ぶ小説なのは間違い無いですけどね!?平山小説に免疫

ない人が、いきなりこれ読もうとしても、多分9.5割の確率で挫折するんじゃ

ないかな!?特に女性は拒否反応示す人が多いかも?でも、ひとたび平山ワールド

にハマってしまうと、もう、抜け出せない沼にはまっちゃうんですよねぇ、これが。

私の感覚、多分おかしいんで(笑)、決してオススメはしませんけどね。

残酷・残虐・暴力・エロ・グロ・下ネタ等々苦手な方には特に。いや、私だって

得意な訳じゃないですよ!?っていうかむしろ苦手だよ!でも読んじゃうんだよ。

だって、面白いからね!(何で逆ギレ?w)

それに、ナンセンスなだけじゃなくて、意外と感動的なシーンが出て来たりもするし、

深いメッセージ的なものが隠されているようなお話もあるんですよ(多分・・・)。

まぁ、ほとんどは、単なるグロくてシュールな世界を見せられてるだけって感じ

なんですけどね・・・(笑)。

収録作品が多いので、さすがに途中で飽きてきた感じもあったけど、それでも

挫折したいとは1ミリも思わなかった。最後まで読み通した時は、妙に爽快な

達成感が・・・!(笑)

タイトルのペリカンは、いつ出て来るのかなぁとワクワクして待っていたのだけど、

最後の最後でしたね。この壮大な20個くらいある体験談を、一匹のペリカン

延々と話している姿を想像すると・・・語られたペリカンも迷惑だったろうな(笑)。

ペリカンは相手がどんなに自分より身体のでかい存在だろうと、食そうと襲う

習性があるらしいので、こんな長い間じっと聞いていてくれるとも思えないんだ

けどね(苦笑)。