ミステリ読書録

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メフィスト編集部編/「ミステリ愛。免許皆伝!メフィスト道場」/講談社ノベルス刊

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メフィスト編集部編「ミステリ愛。免許皆伝!メフィスト道場」。

「一族」「ヌレギヌ」「鍵」
人気ミステリ作家同士の、目が離せないトリック対決!!
必殺!難解トリック乱れ打ち――充実のミステリ競作集!(あらすじ抜粋)


以前に読んだ忍び寄る闇の奇譚 メフィスト道場①のシリーズ第二弾。前作で①って
ついていたのに、今回②ってついてないのは一体・・・統一しろよ^^;
今回も各お題に従って、二人の作家が対決(?)する対戦形式になってます。
お題と対決内容は以下。

Round 1 一族 
『人類なんて関係ない』 平山夢明 VS.『祝葬』 久坂部羊
Round 2 ヌレギヌ 
『マーキングマウス』 不知火京介 VS.『神様の思惑』 黒田研二
Round 3 鍵 
『Aカップの男たち』 倉知淳 VS.『鎧塚邸はなぜ軋む』 村崎友


正直いいまして、突出した作品はなかったかなぁという印象。しいていえばクロケンのが
一番私は好きだったかなぁ。平山さんの意外な作風にビックリ・・・いつもの黒さは一体
どこへ?多少のグロはお約束で入ってはいましたけれど・・・。なんだか、おとなしすぎて
面白味がなくなっちゃったなぁって感じでした。一番ガッカリしたのは倉知さんだな・・・
なんでわざわざこんな作品を?お題が『鍵』なら、もっと他にいくらでも書けるでしょうに。
違う意味で一番強烈に印象に残った作品ではありましたが(これは一度読んだら忘れられない
作品だね、絶対^^;)。
それぞれのお題の脈絡のなさもなんだかなぁって感じ。もう少し統一感があっても良かった
のでは・・・。
一応対戦形式ってことで、個人的に勝敗を決めるとしたら・・・Round1はうーん、どっちも
どっちって感じなので引き分け。Round2は黒田さん、Round3はインパクトの勝利で倉知さん
かな(でも、決して好きな作品ではないし二度と読みたいと思わないのだけれど)。それに
村崎さんは真相の部分で腑に落ちないところがあったので。


以下、各作品の感想。

< Round1 一族 >
平山夢明『人類なんて関係ない』
人の死を予知する能力を持つ少年と出会った主人公が、厭世的な少年を救おうとする人情話。
うーん、どうしたんでしょうか、平山さん。らしい要素も入っているものの、なんだか全体的に
ゆるすぎて拍子抜け。ナナについても、ラストにオチを持って来なくても誰でも気付くでしょ。

久坂部羊『祝葬』
遺伝的に『早死』の家系に生まれた男が死んだ。男の死の真相とは?久坂部さんは初読み。
実は一冊知り合いからもらって持ってる本があるのですが、医療ものってことで今ひとつ食指が
動かず、ずーっと積読のままです^^;これもやっぱり医療もの。死体が大量に汗をかいていた
理由は、医療の知識がない人間には推理しようがないですね。そういうものなのかぁと思いました。
なんだか救いがなくて気が滅入るような真相でした。


< Round2 ヌレギヌ >
不知火京介『マーキングハウス』
こういうタイムトリップものは本当に頭が混乱しちゃって理解するのが大変。いまひとつ理解が
おいつかないまま真相まで読み進めたせいか、結局「ふーん」って感じでした。SF好きならもっと
面白く読める作品なんでしょうけど・・・。誰も彼もが他人に疑心暗鬼になっていて、これも
嫌な真相で後味が悪かったです。

黒田研二『神様の思惑』
先述したように、作品としては一番好き。カミさんの本当の思惑を知って、胸が痛くなりました。
ミステリとしてそれほど突出している作品ではありませんが、じんわりと心に沁みる良作です。
アンソロジーで読んだ黒田作品ってほとんどはずれがない気がする。短編上手いなぁ。

< Round3 鍵 >
倉知淳『Aカップの男たち』
これ、完全にタイトルでネタバレしていると思うんですが。もー、生理的に読むのがキツかった
です。バカミスっていうより、これは完全にキモミスですよ。うげー。でも、多分こういう
人たちって実在するんだろうなぁ。彼らがソレについて熱く語っているシーンが気持ち悪いの
なんのって。完全にドン引き。っていうか、私よりよっぽど知識あるじゃないのー^^;;
(負けた)鍵がなくなった真相には拍子抜けでしたが、もうミステリとか最後はどーでも
良くなりました^^;インパクトNO.1の作品なのは間違いありませんが・・・なぜこのお題で
この作品を思いついたのか・・・。

村崎友『鎧塚邸はなぜ軋む』
メフィスト道場①の『忍び寄る~』に収録されていたのと同シリーズですね。これの元作品を
ちゃんと読んでみたいと思うのですが。どうも、主人公と花岡さんの関係がいまいち良く
わからないんだもの。謎を解いたら写真部の余りのカメラをあげるって、勝手にいち部員が
安請け合いしちゃってるのはどうかと思いました(だいたい、普通余ってないだろう^^;)。
先程述べましたように、真相について疑問に感じる点があったので、↓のネタバレ部分で後述します。











というわけで、以下村崎さんの作品のネタバレ。未読の方はご注意を。















犯人が鎧塚の寝室のドアを開けられた理由は、犯人の体重が120キロの巨体だったから
ですよね。だったら、最初に鎧塚の死体が発見される前にドアが開かなかった時、ドアの前には
複数の人が集まっていて120キロ以上の負荷がかかっていた筈なのに開かなかったのは何故?
二人の男(館野と雅一)がドアの前にいたら絶対総体重は120キロを超えると思うんだけどなぁ。
本当に一人分のある一箇所のみに120キロの体重がかからないと開かないってことなのかなぁ。
どうも、状況描写が不足しているように感じてすっきりしませんでした。




















トータルとしては前作の方が面白かったかなぁ。突出して良かった作品もなかったし、全体的に
小粒な印象。実は続けてもう一作の方も読み始めたところ。なんだか最近アンソロジーを良く
読んでいるような・・・?ミステリ道場っていう趣向は面白いと思うんですけどね。なんか、
企画が上滑りしているような気がしないでもないような・・・あは(黒べ発言?^^;)。