下村さん最新作。ここ数作は遠ざかっていたのですが、これはタイトルや内容が
面白そうだったので借りてみました。スペインは随分前に旅行したことがあって、
もちろんサグラダ・ファミリアもカサ・ミラもグエル公園も行きました(カサ・ミラ
はバスの中から眺めただけだったけれど)。ガウディ建築を観るのは当時憧れでも
ありましたから、実物を観られた時は感激したなぁ。
本書は、そんなガウディが遺したという、サグラダ・ファミリアの設計図を
巡るミステリー。
主人公はバルセロナで暮らす日本人の佐々木志穂。父親はサグラダ・ファミリア
の聖堂石工技師だ。ある日、父親が『サグラダ・ファミリアに行ってくる』という
メモを残したきり、夜中になっても戻らず心配して捜索していたところ、サグラダ・
ファミリアの尖塔に人が首を縛られて吊られているのを発見してしまう。死体は
父と親交の深かったアンヘルだった。父の失踪はこの件と関係があるのではないかと
考えた志穂は、恋人のホルヘと共に、手がかりを求めて、サグラダ・ファミリアの
建設に関わる人々のことを調べ始めるのだが――。
サグラダ・ファミリアを含めたガウディの建築の蘊蓄がたくさん出て来て、とても
興味深かったです。知らないこともたくさんありましたね。私がスペイン旅行した
当時は、サグラダ・ファミリアは当然ながら建設中で、中も見学しましたが、
工事の車両などがたくさん入っていました。説明してくれたガイドさんも、私たちが
生きている間に完成することはないだろう、みたいな説明をしていました。でも、
最近になって、サグラダ・ファミリアの完成は2026年になるだろう、という
発表があったそうで(と本文中に書いてあった。これはフィクションじゃないです
よね・・・?)。自分が生きている間に完成するとは思わなかったなぁ。
まぁ、それも、コロナがあって建設が滞ったせいで、もう少し伸びるみたい
ですけど。それでも、生きている間には完成形が観られそうですね。コロナも
落ち着いたから、完成したらまた現地に行って観てみたいなぁ・・・。
おっと、脱線してしまった。すみません。
サグラダ・ファミリアの殺人事件の犯人に関しては、嫌な予感がしていて、
あの人物じゃなきゃいいけどなぁ・・・と思いながら読んでました。でも、志穂
の友人が告げた人物がまさにその人だったので、やっぱりか~とショックを
受けました。・・・が、その後で、まんまとひっくり返されましたね。そりゃ
下村さんだもんね。そのまんまの人物の訳ないよね~と溜飲が下がりました。
カタルーニャ語とカスティーリャ語がいまいち区別できなくて、混乱しましたね。
どっちがどっちだっけ?って。響きも似てるし、わかりにくかったな。
現地の人にとっては根の深い問題なのでしょうけどね・・・。バルセロナの人々の間
に、こんな禍根があるとは思わなかったです。旅行しただけでは、そういう現地の闇の
部分って見えてこないですもんね。
志穂の友人であるルイサとその夫であるラモンの夫婦問題が、意外とあっさり解決
してしまったのに少し拍子抜け。っていうか、DV男だったラモンが、あんな簡単に
改心できるものなのかなぁ、とちょっと首を傾げる展開ではありましたね。幸せに
なって欲しいとは思いますけど・・・。
志穂と父親のわだかまりが解けたのは良かったです。母親についての誤解も
解けたし。これからは、親子仲良くして行けそうですね。
志穂と恋人のホルヘの関係がどうなるのかが一番心配だったのですが、それも
ラストまで読んだ限りは問題なさそうですしね。
ガウディの幻の設計図に関してはちょっと肩透かしな感じは否めなかったけれど、
フィクションとはいえ、そりゃ、こういう結末にするしかないでしょうからね。
いつか本当に、実物が発見される日が来たりして。
それにしても、サグラダ・ファミリアがいかに緻密に計算されて作られたかを
知って、愕然としました。ガウディは本当に細かいところまで計算して作ろうと
していたんですね。本人が完成したところを見られずに亡くなったのはどれだけ
無念だったことでしょうか。
今でも空から、完成を今か今かと見守っているのかな。