東野さんの最新刊。タイトルからそうじゃないかな~とは予想してましたが、予想
通り、『ラプラスの魔女』に出て来た羽原円華シリーズ。前作は前日譚でしたが、
今回は、『ラプラス~』から七年後という設定のようです。コロナ禍らしき描写
もありましたし、ほぼリアルタイムで時間が流れているってことなのかな(『ラプ
ラス~』出たのが2015年なので、多分そうかと)。
相変わらず、得体のしれない女性だなぁと言うのが正直な感想。今回主役を務める
中学生の少年にとっては、まさに『魔女』のような女性に見えたことでしょう。
信じられない奇跡を次々と起こし、挙句の果てには少年の父親を殺した事件も
解決に導いてしまうのだから。小悪魔的な魅力のある円華を前に、ドギマギ
している少年二人(主人公とその親友)が微笑ましく感じつつも、いちいちその
掴みどころのない言動に翻弄されて気の毒でもありました。ただ、彼女と出会い、
行動を共にすることで、少年二人は確実に成長しましたし、二人の間の友情の絆
も強まったと言えるはずです。
個人的には、円華みたいな女性は何考えてるかわからなくて、あんまり好感
持てるとは言えないんだけど、主人公の陸真に対する言動の端々から、実は
優しい女性なのも伺える訳で。天才であるが故に、いろいろと気苦労も多い
だろうし、背負っているものも重いんだろうし。物怖じせずに何にでも立ち向かう
って意味では、強くて逞しい、東野さんにはあまりいないタイプのヒロインと
云えるのかも。
以下、ラストのネタバレ気味です。未読の方はご注意ください。
作中で出て来た、日本が、警察(政府?)によって全国民のDNAや個人データが
管理される世の中になったとしたら、さすがにやっぱり抵抗を感じると思うな。
まぁ、確かに犯罪はしにくくなるだろうけども・・・。かの国みたい。
終盤に出て来るゲノム・モンタージュの話とか、近い将来リアルに実現しそうで
ちょっと怖いな。こういう設定、いかにも東野さんがお好きそうですよねぇ。
最先端の技術というか。そういう学術雑誌とか、いつも目を通してそう(笑)。
リーダビリティあるので、ぐいぐい読まされたのは間違いないのだけど、ちょっと
人間関係が煩雑で、事件のからくりも若干わかりにくいところもあったかな
(私の頭の問題も多いにありますが^^;)。終盤の展開も、ちょっと腑に落ち
ないところがありましたし。あの状況で、脇坂もその場にいた犯人も、みんなが
無事だったのは、奇跡に近いのでは・・・。そもそも、中学生に大の大人を助ける
なんて出来るものなのかと思わないでもないし。ま、火事場の馬鹿力って言葉も
あるし、何より、純也が純粋に相手を助けたいと必死になった結果なのでしょう
けどね。
自分には何もないと思っていた陸真も、円華を助けることで自信がついただろうし、
結果的には大団円で良かったのですけどね。天涯孤独の身になってしまった
ことは悲しいですが、純也という、かけがえのない親友がいてくれるのだから、
これから前を向いて生きて行って欲しいですね。円華とも、いつか大人になって
再会出来る日が来るといいけど。
そういえば、一作目で円華のボディガードとして活躍したタケオが再登場して
嬉しかったです。思わぬ職業に就いていてビックリでしたが。彼も第二の人生
を生きているんですね。円華との繋がりが切れていなくて嬉しかった。まぁ、
あれ以来の再会ではありましたけども。ここぞという時に頼りになる人として、
まだ円華の中でも繋がりを持っていたい人なんだろうな。